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東京高等裁判所 昭和47年(う)1400号 判決 1976年10月22日

目次

主文・・・・・・九七三

理由・・・・・・九七五

第一章 いわゆる吹原事件・・・・・・略

第一節 三菱長原通知預金証書の詐欺関係・・・・・・〃

第二節 三菱銀行に対する恐喝未遂関係・・・・・・〃

第三節 黒金文書の偽造、同行使関係・・・・・・〃

第四節 手形等詐欺関係・・・・・・〃

第五節 大和銀行特別背任関係・・・・・・〃

第六節 その他・・・・・・〃

第二節 いわゆる大橋事件・・・・・・〃

第一節 柏井土地買収関係・・・・・・略

第二節 京成電鉄株式買取関係・・・・・・〃

第三節 宝酒造土地買収関係・・・・・・〃

第四節 手形割引関係・・・・・・〃

第五節 アメレックス横領関係・・・・・・〃

第六節 昭和化成品、日東冶金手形割引関係・・・・・・〃

第七節 賍物故買関係・・・・・・〃

第八節 その他・・・・・・〃

第三章 いわゆる脱税、高金利違反事件・・・・・・九七五

第一節 法人税法違反・・・・・・九七五

第二節 高金利取締法違反・・・・・・略

第四章 当裁判所による自判・・・・・・一〇一八

第一節 破棄自判の理由・・・・・・一〇一八

第二節 認定事実・・・・・・一〇一九

第三節 証拠の標目・・・・・・一〇二〇

第四節 主要な争点に関する証拠説明・・・・・・略

第五節 法令の適用・・・・・・一〇二二

第六節 量刑の事情・・・・・・一〇二二

第七節 本件公訴事実中の無罪部分・・・・・・略

別紙

訴訟費用負担一覧表・・・・・・一〇二五

略記号および略語例・・・・・・一〇三一

別冊 (法人税法違反関係諸表)

第一 修正貸借対照表(昭和三八年一月期)

第二 修正貸借対照表(昭和三九年一月期)

第三 修正貸借対照表(昭和四〇年一月期)

第四 税額計算書

第五 逋脱所得の内容

本籍

東京都大田区雪ケ谷四二八番地

住居

同都同区東雪ケ谷二丁目三二番七号

会社役員

吹原弘宣

大正一一年九月一二日生

本籍

東京都中央区日本橋茅場町一丁目一二番地

住居

同都渋谷区神宮前四丁目一四番地の八徳田一枝方

会社役員

森脇将光

明治三三年一月一七日生

本籍

東京都港区麻布台一丁目二番地六

住居

同都目黒区柿ノ木坂一丁目二番地一九号野谷篤子方

会社役員

大橋富重

大正一二年三月二〇日生

本店所在地

東京都渋谷区神宮前四丁目一四番八号

株式会社 森脇文庫

右代表者代表取締役

森脇将光

右被告人吹原弘宣に対する詐欺、商法違反、私文書偽造同行使、有価証券偽造同行使、被告人森脇将光に対する詐欺、私文書偽造同行使、恐喝未遂、賍物故買、法人税法違反、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律違反、被告人大橋富重に対する横領、詐欺、被告会社株式会社森脇文庫に対する法人税法違反、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律違反各被告事件について、昭和四六年一二月二〇日東京地方裁判所が言渡した判決に対し、被告人吹原弘宣、同森脇将光、同人の原審弁護人、被告人大橋富重および被告会社株式会社森脇文庫からそれぞれ控訴の申立があったので、当裁判所は、検察官品田賢治、同栗田昭雄、同辰已信夫、同藤本一孝出席のうえ審理し、つぎのとおり判決する。

主文

原判決中被告人吹原弘宣、同森脇将光、被告会社株式会社森脇文庫に対する各有罪部分および被告人大橋富重に関する部分を破棄する。

被告人吹原弘宣を判示第四章第二節四の5の罪を除くその余の各罪につき懲役八年に、判示第四章第二節四の5の罪につき懲役一年に、

被告人森脇将光を懲役五年および罰金三億五〇〇〇万円に、

被告人大橋富重を懲役四年六月に、

被告会社株式会社森脇文庫を罰金四億五〇〇〇万円に

処する。

原審における未決勾留日数中、被告人吹原に対しては一二〇日を、被告人森脇に対しては二四〇日を、被告人大橋に対しては九〇日を、それぞれの懲役刑(ただし被告人吹原については八年の刑)に算入する。

被告人森脇において右罰金を完納することがづきないときは金七〇万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

押収してある証と題する書面四通(昭和四七年押第三三六号の50・55・56・86)、誓約念書二通(同号の57・83)、念書三通(同号の58・59・82)、融資申込書一通(同号の191)、債務弁済契約公正証書作成委任状一通(同号の192)、約束手形一通(同号の196)中の判示各偽造部分は、被告人吹原からこれを没収する。

原審および当審における訴訟費用は別紙訴訟費用負担一覧表のとおり、各被告人の負担とする。

被告人森脇に対する公訴事実中、いずれも被告人吹原と共謀のうえ、三菱銀行長原支店次長菅原順平から通知預金証書二通を騙取したとの点、黒金泰美作成名義の文書九通を偽造し、うち四通を三菱銀行業務第一部長山科元らに対し行使したとの点、朝日土地興業株式会社から約束手形、株券を、東洋精糖株式会社から約束手形、小切手、不動産権利証、委任状、印鑑証明書を騙取したとの点、被告人大橋と共謀のうえ、昭和三八年九月九日ころ京成電鉄株式会社から約束手形を騙取したとの点については、被告人森脇はいずれも無罪。

理由

本件控訴の趣意は、被告人吹原弘宣の弁護人斉藤悠輔作成名義の控訴趣意書、控訴趣意の補充書、弁護人小泉英一作成名義の控訴趣意書、控訴趣意書、控訴趣意補充書、弁護人中野博義、同田口俊夫共同作成名義の控訴趣意書、被告人森脇将光、被告会社株式会森脇文庫の弁護人大山忠市作成名義の控訴趣意書(1)ないし(32)、控訴趣意書補充書(33)ないし(35)、上申書、弁護人伊達秋雄、同小谷野三郎、同三宅陽、同鳥越溥、同佐藤博史共同作成名義の控訴趣意書補充書(35)、被告人大橋富重の弁護人向江璋悦、同佐藤成雄、同安西義明、同多田武、同布施誠司共同作成名義の控訴趣意書に記載されているとおりであり、これに対する答弁は、検察官北村久弥作成名義の答弁書(一)および(二)、同中野博士作成名義の答弁書(三)に記載されているとおりであるからこれらを引用する。

これに対し、当裁判所は、記録を調査し、当審における事実取調の結果に基づき、つぎのとおり判断する。

なお、以下本判決で使用する略記号および略語は、別紙略記号および略語例のとおりである。

第三章 いわゆる脱税、高金利違反事件

第一節  法人税法違反

第一  大山趣意書(23)第二章第一節、大山上申書第二の四、大山趣意書(25)九八、一四三頁記載の控訴趣意

原判決は第三章第三節第一項第一において「不法原因給付について」と題して判断を示しているが、その判示自体および同判示と森脇の一般刑事事件における判示との間に理由のくい違いがあり、また原判決には不法原因給付を認めなかった点に事実の誤認があるという論旨について。

(1)  大山趣意書(25)一四三頁No.八五、一〇八、一一二、一四二、一四三、一五三、一七三、二〇三、二九六、三一二~三、三一九~二〇、三九〇はいわゆる吹原事件のうち三菱長原の通知預金証書の詐欺、同No.三三七、三三八、三四〇、三五五は朝日土地手形の詐欺、同No.四〇二、四五二~八は東洋精糖小切手あるいは手形の詐欺に関連するものであるが、所論はいずれもそれらの詐欺が有罪であることを前提としているものである。しかしながら、右の各詐欺については、前記第一章第一節第一の二、同第四節第四の二で説示したとおり森脇は無罪であるから、論旨は前提を欠き理由がない。

(2)  大山趣意書(25)九八頁のNo.四〇〇、四〇一、四三五、五〇四はいわゆる大橋事件につき当審でも有罪と認めた事実とは何ら関係がなく、また同No.五七九、五八〇、五九二は原判決が無罪とした昭和四一年三月一九日付起訴状記載の公訴事実中第三に関連するもので、以上はいずれも不法性を欠くものというべきであるから、論旨は前提を欠き理由がない。

(3)  大山趣意書(25)一四三頁のNo.四〇九、四一一、四二二~三、四二四~三〇、四三三についてみると、森脇は藤山手形および間組手形の詐欺については前記第一章第四節第四の二で認定したとおり無罪であるが、後記第四章第二節五の1の(一)、(二)、同2の(一)、(二)で判示するとおりそれらの手形につき賍物故買の責を免れない。そこで森脇文庫の吹原に対する右貸付はいずれも不法性を帯びるものというべきである。しかし関係証拠によれば、森脇文庫と吹原との取引においては、このような貸付についても返済があるのが常態で収入実現の蓋然性が高いと認められるので、税法上は森脇文庫の資産として所得計算の対象となるものと解される。そこで前記の各貸付が不法性を帯びるからといって、これを昭和四〇年一月期の期末の貸付金から除外するのは相当でないというべきである。原判決にはこの点につき所論のような違法はない。論旨は理由がない。

第二  大山趣意書(23)第二章第四節第一の一、二、大山上申書第三の四記載の控訴趣意

貸倒れ貸付金につき課税上の一般的な基準に従うべきものとする原判決の見解および吹原、大橋について貸倒れを認めなかった原審の措置が不当であり、原判決にはこの点につき法令の解釈適用の誤りあるいは審理不尽に基づく理由のくい違いがあるとの論旨について。

原判決は第三章第三節第一項第四の二の2(一七〇丁裏以下)において、課税上の貸付金の貸倒れを認めるべき一般的な基準を示し、これに従って本件を律しているが、当裁判所も右の原審の措置を正当なものであると認める。したがって原判決には所論のような法令の解釈適用の誤りも、審理不尽に基づく理由のくい違いも見受けられない。論旨は理由がない。

第三  大山趣意書(23)第二章第四節第一の三、四記載の控訴趣意

一  吹原に対する貸倒れ貸付金に関する原判示と同人の資力等に関する原判示との間に理由のくい違いがあるとの論旨について。

なるほど原判決の第一章第二節第一の一の1(七丁以下)、同3(八丁裏以下)には吹原の人物、資力等につき所論のような記載があるが、右記載は吹原について回収不能の事実があったとまでは判示していないから、原判決中の右のような記載と同第三章第三節第一項第四の二の2の(一)(一七一丁)の記載との間に所論のような理由のくい違いがあるとは認められない。論旨は理由がない。

二  大橋に対する貸倒れ貸付金に関する原判示と同人の資力等に関する原判示との間に理由のくい違いがあるとの論旨について。

なるほど原判決の第三章第二節第三の二の3の(二)(一三七丁)には大橋の資力等につき所論のような記載があるが、右記載は大橋について回収不能の事実があったとまでは判示していないから、原判決中の右のような記載と同第三章第三節第一項第四の二の2の(二)(一七一丁)の記載との間に所論のような理由のくい違いがあるとは見受けられない。論旨は理由がない。

第四  大山趣意書(23)第二章第四節第四の一、二記載の控訴趣意

原判決中吹原および大橋に対する貸付金の雑損控除についての判示と森脇文庫の伝票や帳簿などの記載が信用できないと判示している部分との間に理由のくい違いがあるとの論旨について。

原判決の第三章第一節第一項第三(六五丁)によれば、原審は原判決の指摘する諸点から見て森脇肇の証言が信用し難いとしているのであって、所論のように森脇文庫の伝票や帳簿等の記載が信用できないとしているものではない。したがって右記載が信用できないと判示しているとの前提に立って、右記載と原判決の第三章第三節第一項第四の三の1の(二)(一七五丁裏以下)および同2の(二)(一七六丁裏以下)の記載との間に理由のくい違いがあるとする所論には賛同することができない。論旨は理由がない。

第五  大山趣意書(23)第二章第二節第二記載の控訴趣意

一  原判決は制限利率内の利息について金利計算が面倒であるので、とりあえず原審の弁論終結時の段階で判決したことを自認しているというべきであるから、この点において審理不尽が明白であり、その結果理由のくい違いが存在しているとの論旨について。

原判決は第三章第三節第一項第二の二(一六一丁)において所論のような理由により未収利息を一切所得より除外して森脇文庫の本件各期末の貸付金額を算出している。これに対し所論は、原判決の右のような措置は審理不尽の結果本来右各期末の資産の部に計上すべき未収利息をもすべて除外し、そのために理由のくい違いが生じているというけれども、右は自已に不利益な主張というべきであるから、適法な控訴理由に当らない。論旨は理由がない。

二  原判決は森脇文庫の本件各事業年度の期末に残存していた「新貸」のうち「利息新貸分」のみを所得から除外しただけで、利息等の名目でした天引および約定元本と約定利息が合算された貸付金のなかに含まれている各未収利息を所得から除外していないから、原判決には審理不尽に基づく理由のくい違いがあるとの論旨について。

(1) 原判決は利息等の名目でなされた天引分を貸付額面額から除外していない。しかしながら、森脇文庫の伝票や帳簿等関係証拠によれば、森脇文庫においては天引された利息(実質的に利息とみるべきものを含む)は天引の時点で収入として計上し、天引前の約定元本が依然として残存するものとして取扱っていることが明らかであり、利息債権は天引の時点において消滅し、債務者には約定元本の支払義務だけが残っている。このような天引分は利息の前払として既収の利息と認めるべきである。

これに対し、利息の支払のため新規の貸付が起されそのなかから他の貸付金の利息が天引されている場合については、その実質は利息債権を目的として新たな貸付が成立したにすぎないのであって、利息債権は新債権に引継がれて未収の状態にあるものと認められるから、この場合と当該貸付金の利息をその貸付金による手渡金のなかから天引した場合とを同日に論ずることはできない。

ところで、既収の利息は制限超過部分を含めてその全部が所得として課税の対象となると解すべきであるから(最高裁昭和四三年(行)第二五号昭和四六年一一月九日第三小法廷判決民集二五巻八号一一二〇頁参照)いわゆる財産増減方式により所得計算をするにあたっては、約定元本から天引利息を減額しないで貸付金残高を算出すべきである。したがって、原判決が前記のような計算方法によって森脇文庫の貸付金残高を算出しているのは相当である。

(2) また、前掲各証拠によると、森脇文庫においては利息以外の名目でなされた天引分もすべて天引の時点で既収として扱われていることが認められ(ただし、他の債権の元本の支払にあてるための天引については、その実質は他の債権の元本の全部または一部を目的として新たな貸付が成立したにすぎないのであって、右の元本債権は新債権に引継がれて未収の状態にあるものと認めるべきである)、それらのなかにも未収利息は含まれていないものと認められる。

(3) さらに、約定元本と約定利息が合算されて新規貸付または切替となった取引で期末に残存している貸付金については、原判決と前掲各証拠を対比検討してみると、原判決が右約定利息の部分をすべて本件各期末の貸付額面額から除外していることは明らかである。

(4) 以上の次第であるから、所論のいう未収利息のなかには未収利息と認めるべきもの(全部または一部が利息の支払のためである貸付のその全部または一部、以下利息新貸という)とそうでないものとがあるが、未収利息と認めるべきものについては原判決がそれを期末の貸付額面額から除外する方針を一貫させているから、原判決には所論のいうような審理不尽も理由のくい違いも存しない。論旨は理由がない。なお、個々の債権につき未収利息が含まれている旨の事実誤認の主張については、後記第八の(3)、第九の(1)の(リ)の(ⅰ)、(2)の(ハ)の(ⅰ)、(4)、第一七、第一八、第一九の(1)ないし(3)、第二四の(1)、(5)、(6)、第二五の(2)において判断を示すとおりである。

第六  大山趣意書(23)第二章第二節第三記載の控訴趣意

原判決が未収超過利息について法律上有効に残存する元本を基準とする算出方法をとらなかったのは最高裁昭和四六年一一月九日第三小法廷判決に違反するのみならず、これに従うと判示しながらその算出方法をとらなかったことに理由のくい違いがあるとの論旨について。

原判決は、前記第五でみたとおり、未収の利息は利息制限法による制限内のものであるか否かを問わず、一切これを除外して所得計算をしているのであるから、未収の利息が法定の制限内であるかどうかを算定する必要はなかったのであって、原判決が所論の最高裁判決のうち、利息、損害金が法定の制限内であるかどうかの算定方法に関する判旨に違反しているものということはできない。また、原判決は未収利息中制限超過部分が所得を構成するか否かの点について右最高裁判決に従うといっているだけで、所論指摘の算出方法について右判決に従うとは判示していないのであるから、原判決には所論のような理由のくい違いもない。論旨は理由がない。

第七  大山趣意書(23)第二章第二節第四、同(29)ないし(32)記載の控訴趣意

原判決は最高裁昭和四六年一一月九日第三小法廷判決に一部従いながら、森脇文庫の各事業年度における既収の制限超過利息、損害金につき、その法定充当に関し何らの考慮をしないまったくこれを度外視していることが判文上明らかであるから、利息制限法の解釈適用につき最高裁昭和三九年一一月一八日大法廷判決に違反しているものであり、したがってまた森脇文庫の所得計算につき審理不尽による理由のくい違いがあるとの論旨について。

森脇文庫の伝票処理の状況、元帳の記載によると、同文庫は約定利息を受取るについて制限超過の利息を元本に充当することなく、依然として従前どおりの元本が残存するものとして取扱っていることが認められる。このような場合には、所論指摘の最高裁第三小法廷の判決がいうとおり、現実に収受された約定の利息は制限超過部分を含めて課税の対象とすべきである。ところで、現実に収受された利息を課税の対象にするということは、いわゆる財産増減方式によって所得計算をする場合には既収の制限超過利息を元本に充当することなく、約定元本または一部弁済があった場合にはその残額を貸付金として資産の部に計上する方法をとるべきであるということになるから、原判決がこの方法により森脇文庫の所得計算をしたのは正当であると解される。そして右最高裁第三小法廷判決は、既収の制限超過の利息、損害金は私法上は元本の回収にほかならないけれども税法の関係では課税の対象とすべきであるとするものであって、所論指摘の最高裁大法廷判決との間に何らの矛盾はなく、したがってまた原判決が前記のような方法によって森脇文庫の所得計算をしたことが右大法廷判決に違反しているということもできない。原判決は既収の制限超過利息の法定充当について何らの考慮もしていないのではなく、税法上の所得計算のうえでは充当処理をすべきでないとの見解に立っていることが明らかであり、原判決には所論のような審理不尽も理由のくい違いも存しない。論旨は理由がない。

第八  大山趣意書(23)第二章第四節第三の二、同(24)七七ないし九六頁、同(25)一ないし六六、七〇頁、大山上申書補充書一記載の控訴趣意

公表貸付金につき各期末における残存債権の減額を主張する事実誤認の論旨について。

(1)(イ)  所論のうち、昭和三七年一月期の分については、安全投資、東亜輪転、千歳繊維に対する貸付金以外のものは、いずれも原判決の認定額より少額である旨の主張であるが、これは昭和三八年一月期の期首の貸付金の減額を求めるもので、ひいては同期の期末の所得を増額すべきであるという主張であるから、自己に不利益な主張であるというべく、適法な控訴理由に当らない。

(ロ) 所論のうち、日昭に対する昭和三八年一月期の貸付金についてみると、関係証拠とくに37・2・5入金伝票(押三八号中)によると、昭和三七年二月五日七万円の仮受金の入金があったことが認められる。そうすると、原判決は右期末にこれを計上すべきであるのにかかわらずその措置に出ていない。

(ハ) 所論のうち、昭和三八年一月期のパールハウス映画に対する貸付金六〇万円についてみると、関係証拠とくに38・1・28振替伝票(押三九号中)によれば、同年一月二八日に全額弁済になっていることが認められる。したがって原判決が右期末にこれを計上しているのは誤りである。

(2)(イ)  所論のうち、三井商事に対する貸付金の債権を昭和四〇年一月二〇日ころ放棄したので、同年一月期の期末に貸倒れになったという点についてみると、関係証拠(三井商事関係書類―押一三三号を含む)を精査しても、原判決が指摘するとおり昭和四〇年一月二〇日ころ森脇文庫が三井商事に対する債権を放棄したことは認められない。もっとも、原判決挙示の井上久雄の証言および同人作成の<回>を総合すれば、森脇が三井商事に対する債権放棄の意思を明白にしたことはあるが、その時期は昭和四〇年二月であることが認められるので、所論を採用することができない。

(ロ) 所論のうち、昭和四〇年一月期のサンデザインに対する貸付金四〇万円についてみると、関係証拠とくに伽藍康祐作成の<回>、40・1・18振替伝票(押八四号中)、昭和四〇年度貸付元帳(押四七号)を総合すれば、同年一月一八日に熱海玄岳観光代表取締役伽藍康祐に対する貸付金の担保として、サンデザイン振出の額面四〇万円の手形を同人から入手したことが認められるが、サンデザインに対し四〇万円の貸付金が存在することは認められない。しかるに原判決が該貸付金を右期末に計上しているのは誤りである。

(3)  その余の所論のうち所論のいわゆる未収利息あるいは預り金についてみると、関係証拠によれば、これらは利息の天引分のうち所論のいわゆる法定利息を超過する部分あるいは実質的に利息と認めるべきものの天引分であることが認定できるから、前記第五ないし第七で説示したとおり未収利息ということはできず、また、預り金の主張も採用することができない。

(4)  結局以上のうち(1)の(ロ)、(ハ)と(2)の(ロ)については、いずれも原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認があるので、論旨はこの点において理由があり、その余については論旨は理由がない。

第九  大山趣意書(24)七七、九七ないし一二〇頁、同(25)六七ないし二五八頁記載の控訴趣意

吹原、大橋に対するものを除く簿外貸付金につき各期末における残存債権の減額を主張する事実誤認の論旨にについて。

(1)(イ)  所論の昭和三七年一月期の分に関する主張のうち、青木正男、大山実、高松利夫、徳原秀雄、日本標識、平本一方、山口静一郎(旧債分)に対する貸付金以外のものは、原判決の認定額より少額である旨の主張であるが、これは前記第八の(1)の(イ)で説示したと同様の理由により適法な控訴理由に当らない。

(ロ) 所論の昭和三八年一月期の分については、日本標識、山口静一郎(旧債分)に対する貸付金に関する主張は、同期末における所得の増額を求めるもので自己に不利益な主張というべく、適法な控訴理由に当らない。

(ハ) 所論のうち、加藤孝三に対する昭和三八年一月期の貸付金についてみると、関係証拠とくに37・10・18入金伝票(押三八号中)、38・1・29入金伝票(押三九号中)によれば、昭和三七年一〇月一八日二〇万円、昭和三八年一月二九日七〇万円計九〇万円の仮受金の入金のあったことが認められる。そこで右期末においてこれを計上すべきであるのに原判決はその措置に出ていない。

(ニ) 所論のうち、大幸産商に対する昭和三八年一月期の貸付金についてみると、関係証拠とくに37・9・27、37・10・23入金、振替伝票(押三八号中)、38・1・19入金、振替伝票(押三九号中)によると、昭和三七年九月二七日二五万円、同年一〇月二三日四〇万五〇〇〇円、昭和三八年一月一九日二〇万円の仮受金の入金があったことが認められる。そうすると、原判決は右期末にこれを計上すべきであるのにその措置に出ていない。

(ホ) 所論のうち、朝興建設に対する昭和三八年一月期の貸付金についてみると、関係証拠とくに37・5・22振替伝票(押三八号中)によると、右期末において充当残の仮受金一九七万二八六八円のあったことが認められる。したがって、原判決は右期末にこれを計上すべきであるのにその措置に出ていない。

(ヘ) 所論のうち、日本不動産に対する昭和三八年一月期の貸付金についてみると、関係証拠とくに37・8・23入金伝票(押三八号中)によると、昭和三七年八月二三日一〇〇〇万円の保証金名義の仮受金の入金があったことが認められる。そうすると、原判決は右期末にこれを計上すべきであるのにその措置に出ていない。

(ト) 所論のうち、平本一方に対する昭和三七年一月の期末すなわち昭和三八年一月期の期首の貸付金についてみると、関係証拠とくに37・1・13振替伝票(押三八号中)、昭和三七年度貸付元帳(押四九号)によると、該貸付金が三七九万円であることが認められる。したがって、原判決がこれを三一八万円であると認定しているのは誤りである。

(チ)(ⅰ) 所論のうち、前田勉太に対する昭和三八年一月期の貸付金についてみると、関係証拠とくに37・9・8入金、振替伝票、37・9・14振替伝票、37・9・24入金、振替伝票、37・9・19日計表(押三八号中)、38・1・9振替伝票(押三九号中)によると、昭和三七年九月八日三〇万円、同月一九日一三万八六三二円、同月二四日五〇万円、同年一一月二九日一四万五三七六円、昭和三八年一月九日二七万五九四五円計一三五万九九五三円の仮受金の入金のあったことが認められる。したがって、原判決は右期末にこれらを計上すべきであるのにかかわらずその措置に出ていない。

(ⅱ) 所論のうち、前田勉太(割引分)の昭和三八年一月期の貸付金についてみると、関係証拠とくに昭和三七年度伝票(押三八号)、昭和三八年度貸付元帳(押五〇号)によると、右貸付金が四一一四万九六二〇円であることが認められる。したがって、原判決がこれを四六七〇万一四〇九円であると認定しているのは誤りである。

(リ) 所論のうち、松隅(三伸興業)に対する昭和三八年一月期の貸付金についてみると、

(ⅰ) 関係証拠とくに37・5・26、37・8・24振替伝票(押三八号中)によると、昭和三七年五月二六日貸付の二〇九万五〇〇〇円ならびに同年八月二四日貸付の四二三七万四〇九〇円はいずれも利息新貸であることが認められる。そこでこれを未収利息として右期末の貸付金から除外すべきであるのに原判決はその措置に出ていない。

(ⅱ) 関係証拠とくに37・6・9入金、振替伝票、37・11・27入金伝票、37・12・15、37・12・31振替伝票(押三八号中)、38・1・30振替伝票(押三九号中)によると、昭和三七年六月九日九七九〇円、同年一一月二七日、同年一二月一五日、同月三一日、昭和三八年一月三〇日各一五万円計六〇万九七九〇円の仮受金の入金のあったことが認められる。したがって、原判決は右期末においてこれを計上すべきであるのにその措置に出ていない。

(ヌ) 所論のうち、馬越種苗園芸に対する昭和三八年一月期の貸付金についてみると、関係証拠とくに37・12・14入金、振替伝票(押三八号中)によると、昭和三七年一二月一四日預り金名義の仮受金として一五〇万円の入金のあったことが認められる。したがって、原判決は右期末においてこれを計上すべきであるのにかかわらずその措置に出ていない。

(ル)(ⅰ) 所論のうち、山口静一郎に対する昭和三八年一月期の新債の貸付額面額が七八〇万円であるとする点についてみると、昭和三八年度貸付元帳(押五〇号)には、昭和三八年一月三〇日を支払期日とする二五万円の貸付金が前年度からの繰越として記入されていることが認められ、さらに、38・2・23振替伝票(押三九号中)によると、右貸付金が同年一月三〇日より同年二月二八日まで切替になっていることが認められるので、少くとも同年一月三〇日以前に二五万円の貸付が行われたことが明らかであり、該貸付が同年二月一日に行われたことを前提として、右期末の貸付額面額は七八〇万円であるとする所論を容れることができない。

(ⅱ) 所論のうち、山口静一郎(旧債分)に対する昭和三七年一月の期末すなわち昭和三八年一月期の期首の貸付金についてみると、関係証拠とくに昭和三五年度貸付元帳(押一四四号)、昭和三七年度貸付元帳(押四九号)によると、該貸付金が原判示のように一一〇〇万円であることが認められるので、これを一二一一万五八五八円であるとする所論を採用することができない。

(2)(イ)  所論の昭和三九年一月期の分に関する主張のうち、山口静一郎(旧債分)に対する貸付金に関するものは、同期末の所得の増額を求めるもので自己に不利益な主張というべく、適法な控訴理由に当らない。

(ロ) 所論のうち、熱海梅園土地に対する昭和三九年一月期の貸付金についてみると、関係証拠とくに38・12・23振替伝票(押三九号中)、39・2・14出金伝票、日計表(押四〇号中)によると、昭和三八年一二月二三日三四万一四〇〇円の預り金名義の仮受金の入金があったことが認められる。そうすると、原判決は右期末にこれを計上すべきであるのにその措置に出ていない。

(ハ) 所論のうち、加藤孝三に対する昭和三九年一月期の貸付金についてみるに、

(ⅰ) 関係証拠とくに38・11・2振替伝票(押三九号中)によると、昭和三八年一一月二日貸付の七〇万円中二八万九三一二円は利息新貸であることが認められる。そこでこれを未収利息として右期末の貸付金から除外すべきであるのに原判決はその措置に出ていない。

(ⅱ) 関係証拠とくに38・5・25、38・6・27、38・8・12、38・8・20、38・9・23、38・10・12振替伝票(押三九号中)によると、昭和三八年五月二五日三万六〇七六円、同年六月二七日五八五八円、同年八月一二日二万円、同月二〇日一五〇万円、同年九月二三日一〇〇万円、同年一〇月一二日三〇万円計二八六万一九三四円の仮受金の入金のあったことが認められる。したがって、原判決はこれらを右期末において計上すべきであるのにかかわらずその措置に出ていない。

(ニ) 所論のうち、日本標識に対する昭和三九年一月期の貸付金についてみるに、関係証拠とくに38・4・22入金伝票(押三九号中)によると、昭和三八年四月二二日に三〇〇万円の一部弁済のあったことが認められる。そこで右期末において該金額を貸付金より減額すべきであるのに原判決はその措置に出ていない。

(3)(イ)  所論の昭和四〇年一月期の分については、福本匡弘に対する主張は、同期末における所得の増額を求めるもので、自己に不利益な主張というべく、適法な控訴理由に当らない。

(ロ) 所論のうち、加藤孝三に対する昭和四〇年一月期の貸付金についてみると、関係証拠とくに40・1・28入金伝票(押八四号中)によると、昭和四〇年一月二七日貸付の二〇万円は翌二八日全額弁済されていることが認められる。そこで右期末において、貸付金より右金額を除外すべきであるのに原判決はその措置に出ていない。

(ハ) 所論のうち、佐野大作に対する昭和四〇年一月期の貸付金についてみると、関係証拠とくに39・4・30入金伝票(押四〇号中)によると、昭和三九年四月三〇日仮受金二〇万円の入金のあったことが認められる。したがって、原判決はこれを右期末に計上すべきであるのにかかわらずその措置に出ていない。

(ニ) 所論のうち、辰美産業に対する昭和四〇年一月期の貸付金についてみると、関係証拠とくに40・1・27入金伝票、40・1・28振替伝票(押八四号中)によると、昭和四〇年一月二七日二〇〇万円、同月二八日三〇〇万円計五〇〇万円の仮受金の入金のあったことが認められる。したがって、原判決は右期末においてこれらを計上すべきであるのにかかわらずその措置に出ていない。

(ホ) 所論のうち、日本標識に対する昭和四〇年一月期の貸付金についてみると、39・12・25入金伝票(押四〇号中)によると、昭和三九年一二月二五日一〇〇〇万円の一部弁済のあったことが認められる。そこで右期末において該金額を貸付金より減額すべきであるのにかかわらず原判決はその措置に出ていない。

(ヘ) 所論のうち、前田勉太(新債分)に対する昭和四〇年一月期の貸付金についてみると、39・3・31振替伝票(押四〇号中)には「これにより新旧債全て解決済となる」と記載されているので、昭和三九年三月三一日にそれまでにあったすべての貸付金と仮受金とを精算したことが認められる。そこで大山趣意書(25)一五九頁No.一三五一ないし一三六五の仮受金が存在するという所論は採用することができない。

(4)  その余の所論のうち、所論のいわゆる未収利息または預り金、仮受金は、関係証拠によると、いずれも利息の天引分のうち所論のいう法定利息を超過する部分あるいは実質的に利息と認めるべきものの天引分であることが認められるから、前記第五ないし第七で説示したとおり未収利息ということはできず、また預り金、仮受金の主張も採用することができない。

(5)  結局以上のうち、(1)の(ハ)ないし(ヌ)、(2)の(ロ)ないし(ニ)、(3)の(ロ)ないし(ホ)については、原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認があるので、論旨はこの点において理由があり、その余につき論旨は理由がない。

(6)  職権をもって考察するのに、松隅(三伸興業)に対する昭和三八年一月期の貸付金に関し、関係証拠とくに松隅孝雄40・6・9<検>、37・4・30振替伝票(押三八号中)によると、昭和三七年四月三〇日貸付の一五〇〇万円の内入残一〇〇〇万円が、同年八月大島元町二四坪山の山林を代物弁済として取得したことにより消滅したことが認められる。しかるに原判決は右の一〇〇〇万円を右期末の貸付金残高中に計上しているので、この点につき原判決には判決に影警を及ぼすことの明らかな事実の誤認がある。

第一〇  大山趣意書(23)第二章第五節第一、第三記載の控訴趣意

原判決には代物弁済による不動産の取得価格につき帰属清算型を判示した最高裁昭和四五年三月二六日第一小法廷判決を無視した結果理由のくい違いがある、かりに金融業者が代物弁済として取得した不動産を原判示のように固定資産と認めるべきであるとしても同様であるとする論旨について。

代物弁済についてはいわゆる帰属清算型を判示した最高裁の判例があることは所論のとおりであるが、それらの判例は私法上不動産の代物弁済契約があった場合、債務者が債務を履行しなかったときには、右契約により債務者との関係においては該不動産の所有権が債権者に移転し、清算の必要が残るという趣旨であり、税法における代物弁済の取扱いについて直接言及したものではない。代物弁済の実態が原判示のようなものである本件においては、担保不動産の取得価格は、税法上は右の清算の有無に関係なく、原判決が第三章第三節第一項第五の一(一八〇丁裏以下)において説示しているように、原則として時価によるべく、もし時価の算定が客観的に容易でないときは、当該貸付契約における貸付金額または買戻価額をもって右価格とするのが相当であると解する。この理は金融業者が代物弁済として取得した不動産を原判示のように固定資産と認めるとしても同様である。したがって、時価あるいは当該契約の貸付金額または買戻価額をもって代物弁済による担保不動産の取得価格とした原判決には所論のような違法はない。論旨は理由がない。

第一一  大山趣意書(23)第二章第五節第二記載の控訴趣意

代物弁済の時までに債務者によって法定制限超過利息の支払があった場合に、この額を債権額に充当した後の額をもって取得不動産の価格としなかった原判決は、最高裁昭和三九年一一月一八日大法廷判決に違反し、その結果理由のくい違いがあるとする論旨について。

代物弁済契約によって取得する担保不動産の価格は、被担保債権が右契約後代物弁済の時までに減額されたからといって減少するものではない。したがって、原判決が前記第一〇でみたように担保不動産の評価をしたからといって、所論指摘の最高裁大法廷判決に違反するところはないというべきである。原判決には所論のような違法はなく、論旨は理由がない。

第一二  大山上申書第一の三の(14)記載の控訴趣意

森脇文庫は徳田一枝の所有にかかる東京都台東区駒形一の七ほかの土地、建物および同都中央区日本橋室町一の一六所在の建物の使用賃貸借料を同人に代って賃借人から受領し、これを営業資金として利用しているので、右賃借料を借入金として各期の期末に計上すべきであるのにこれを計上していない原判決には事実の誤認があるという論旨について。

証人徳田五<公>、昭和三七年度ないし同四〇年度振替伝票(押三八ないし四〇、八四号)によると、森脇文庫が徳田の所有にかかる所論の土地、建物につき、同人に代って賃借人から毎月の使用賃借料を取立ててこれを同人に手交せず、自社の営業資金として借用していたこと、その結果所論のように森脇文庫の右徳田に対する借入金が昭和三八年一月期と同三九年一月期の各期末においていずれも二四〇万円、同四〇年一月期の期末において一七〇万円、それぞれ増加していることが認められる。そこで右各期の期末において、以上の金額をいずれも借入金として計上すべきであるのにかかわらず、原審はその措置に出ていない。原判決にはこの点につき判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認がある。論旨は理由がある。

なお、安全投資と将光商事の借入金に関する所論は、かりに所論のような事実があったとしてもいずれも本件各事業年度の期末に増減がないので、論旨は結局理由がないというべきである。

第一三  大山趣意書(25)一五四ないし一五六頁、大山上申書第一の三の(15)の<1>記載の控訴趣意

原判決は吹原に対する仮受金につき、昭和四〇年一月期において一億五六三〇万四〇〇〇円を計上しているのみであるところ、昭和四〇年三月一五日森脇、吹原間に締結された相互債権務確認契約の成立に際し、吹原と協議のうえ、仮受金をいわゆる旧債務の元本またはその利息未精算分に充当処理したが、右仮受金のうち吹原から現実に入金となったものはその充当処理がなされるまでは各期末において仮受金残高となるべきものであるから、右仮受金残高である昭和三八年一月期の八九九万九三二〇円、昭和三九年一月期の二億九一〇九万二八五〇円および昭和四〇年一月期の五億一四五七万六五〇三円をそれぞれ各期末に計上すべきであるのにこれらを計上していないので、昭和三八年一月期の期末と昭和三九年一月期の期末の右各金額および昭和四〇年一月期の期末の右金額より原判決が計上している冒頭に掲げた金額を差引いた三億五八二七万二五〇三円がそれぞれ計上洩れになっており、原判決にはこの点につき事実の誤認があるとする論旨について。

(1)  関係証拠とくに45・11・4検察事務官藤井隆作成の判決謄本、39・6・1和解契約書(押一号)、昭和三七年度ないし同四〇年度振替伝票(押五三号)、同貸付元帳(押四七、四九ないし五一号)によれば、(イ)所論の仮受金中原判決の認定した純然たる仮受金を除いたもの(以下本件仮受金という)は、昭和三七年一〇月中旬以降昭和四〇年一月下旬までの二年四箇月の間約二〇〇回にわたるもので、その金額の累積は約三億七〇〇〇万円に達しているが、その間該仮受金につき何ら精算処理がなされていないこと、(ロ)本件仮受金はすべて森脇文庫に対するいわゆる第二次高金利法違反事件の第一審の裁判の係属中に受入れられたものであるから、真実の仮受金であるならば全部伝票や貸付元帳にその旨の記載があって然るべきものである。ところが前記伝票や貸付元帳によると、弁護人の主張するようないわゆる分析仮受の記載のあるものが一部にすぎないものであること、(ハ)本件仮受金は利息の天引あるいは利息の受入と同時に入金されているものであり、伝票や元帳上はその大部分が受利で、その他は雑収入、仮受金、旧債、特別分、特別利などとなっており、なお伝票や元帳に仮受金と合致しないものが若干あることが認められる。以上の諸点を総合すると本件仮受金の実質は、雑収入という記載のあるものは、その記載どおり雑収入と認めるべく、その他は後記(3)の(イ)、(ロ)を除きすべて利息と認定すべきものである。

(2)  もっとも40・3・15相互債権債務確認契約書(押二号)およびレイアウト表(押五五号)によると、右日時ころ本件仮受金を吹原の旧債務等に充等処理した旨の記載があるが、関係証拠とくに証人猿橋岳近一〇一・一八二<公>、同森脇肇一〇五<公>、吹原一七七<公>、猿橋40・5・25<検>、吹原40・6・25<検>(謄本)、森脇40・5・17、40・6・15<検>、前記相互債権債務確認契約書(とりわけ右書面の作成日付が昭和四〇年三月一五日であるのに、第二項の(18)、(19)および第三項の(1)の七千五百万円のように、右日付より後の同月二五日または同月二〇日にストップと記載されていること)を総合すると、本件仮受金につきあらかじめ吹原との間に後日精算充当する旨の約束があったので前記契約書やレイアウト表の記載のように右約束を実施に移したものではなく、森脇が昭和四〇年三月末日以降の時点において、吹原との取引が公にされると三たび高金利法違反に問われる虞れがあるのでこれを免れるためと税務対策上の見地から、本来利息等として収受したもので精算充当する意思のなかった本件仮受金につき、急きょこれを精算充当することとして前記契約書やレイアウト表のような記載をしたものと認められるので、右の記載は何ら前記認定の妨げとなるものではない。

(3)(イ)  しかしながら、大山趣意書(25)一五六頁のNo.四六七の二〇〇万円については、関係証拠とくに40・1・8入金、振替伝票(押五三号中)によると、昭和四〇年一月八日吹原から現金二〇〇万円を利息の授受とは関係なく仮受金として受入れたことが認められるので、これは原判決の認定した純然たる仮受金と同じ性質のものであると解するのが相当である。しかるに原判決は右仮受金を昭和四〇年一月期の期末に計上していない。原判決にはこの点につき判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認があり、論旨は理由がある。

(ロ) 職権をもって考察するに、関係証拠とくに40・1・16振替伝票、40・1・26出金、振替伝票(押五三号中)によると、昭和四〇年一月一六日に従来からの一〇〇〇万円の貸付金を切替えるに際し新たに四〇〇〇万円の貸付金を起し、そのうち三〇〇〇万円を仮受金としたが、同月二六日に右の貸付金は弁済されたけれども右仮受金については充当等の処理がなされないまま昭和四〇年一月期の期末にいたっていることが認められる。そこで右仮受金三〇〇〇万円を該期末において仮受金残高として計上すべきであるのにその措置に出ていない原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認がある。

第一四  大山上申書第一の三の(15)の<3>記載の控訴趣意

原判決は加藤孝三ほかに対するいわゆる仲介手数料の未払残高として本件期末において何ら計上するところがないが、昭和三八年一月期の期末において一億六九五八万八一一四円、昭和三九年一月期の期末において三億六四〇六万四三七九円、昭和四〇年一月期の期末において五億八六五万五二八三円の未払残高があるので、それぞれこれを計上すべきであるのに原判決が計上しなかったのは事実の誤認であるとの論旨について。

関係証拠とくに昭和三八年度ないし同四〇年度伝票(押三九、四〇、八四号)、同貸付元帳(押五〇、五一、四七号)には所論のように手数料、<手>あるいは旧債という記載があり、また関係証拠とくに加藤孝三40・6・19、中川忠光40・6・17、山口静一郎40・5・28、40・5・29、大竹孝一40・6・19<検>および右各伝票、各元帳を総合すると、仲介者へ手数料を支払ったものと認められるものもあるが、仲介手数料の未払残高の増加に比し支払額が非常に少なく、それが累積していることが認められる。仲介手数料のような性質の金員がこのように長期にわたり積立てられて行くということは通常は考えられないところである。また、関係証拠とくに水田武夫40・6・10、野村博志40・6・5<検>、前記各伝票、各元帳によると、森脇をはじめ森脇文庫の社員が仲介者を通さないで直接貸付をする場合においても、依頼者から仲介手数料相当額の金員を徴し、伝票や元帳には加藤、中川、山口らが仲介したように装って記載している事例が認められる。

したがって、仲介者に対し実際に仲介手数料を支払ったものと認められるものについては、すべて現実に仲介があったものとすべきであるが、そうでないと認められるものについては、森脇文庫において受取利息として計上すると高金利法違反に問われる虞れがあることを虞って、ことさらに貸付額面額の二分五厘あるいは五分等に当るものを仲介手数料のように装って徴したものというべく、これらは受取利息と認定するのが相当である。なお、前者の現実に仲介者に支払がなされたと見受けられるものについても、関係証拠とくに前記各伝票によると、それぞれの事業年度にその支払があったものと認められるので、仮受金として計上すべきものはないということができる。そうすると、加藤らに対する仲介手数料を仮受金として計上しなかった原判決は相当で、論旨は理由がない。

第一五  大山趣意書(23)第二章第五節第四、大山上申書第一の三の(11)の<2>ないし<4>記載の控訴趣意

各不動産の取得価格に関する原判決の認定が誤りであるとの事実誤認の論旨について。

(1)  柏ガソリンスタンド関係

この点についての当裁判所の判断は、原判決の第三章第三節第一項第五の四の1の(二)(一八二丁裏)に摘示されている原審の判断と同一である。論旨は理由がない。

(2)  三伸興業関係

この点については貸付金額の一五〇〇万円をもって右不動産の取得価額とした原判決の認定が相当であり、取得後約一箇月を経た後五〇〇万円の内入弁済があったから取得価額を一〇〇〇万円に減額すべきであるとの所論には賛同しがたい。論旨は理由がない。

(3)  ナルトスポーツ(司重機)関係

この点についての当裁判所の判断は、原判決の第三章第三節第一項第五の四の7の(二)(一八六丁裏)に摘示されている原審の判断と同一である。論旨は理由がない。

(4)  比留間彬関係

比留間晄<検>、39・2・1出金伝票(押四〇号中)によれば、森脇文庫は本件土地の登記名義を森脇肇に変更するために五二〇〇万円を稲荷神社に交付したことが認められるが、これを考慮に入れても、原判決が、証人比留間彬二八<公>によって認定されるところの本件土地の時価七二〇〇万円を取得価格としたことは相当であって、このことは稲荷神社と日本不動産との間の昭和三七年一二月二日付の売買契約書(押一九号中)には右物件の買受価格が七八四〇万円になっていること、および日本不動産と安全投資(代表取締役は森脇)との土地売買契約書(押一九号中)に本件土地の売買価格が八〇〇〇万円となっていることからも裏付けられる。論旨は理由がない。

(5)  日本不動産関係

所論を考慮に入れても原判決が第三章第三節第一項第五の四の3の(二)(一八四丁裏以下)において示した判断が相当である。論旨は理由がない。

(6)  森伝次郎関係

森伝次郎40・6・8<検>によれば、森脇は昭和三八年五月二〇日同人に対し六七〇〇万円と三七五〇万円計一億四五〇万円を貸与することとし、その担保として本件不動産を買戻契約付で譲渡させ、その後右後者の貸金三七四〇万円につきその履行をしなかったことが認められる。したがって、右不動産の取得価格を一億四五〇万円とした原判決は相当であって所論を採用することができない。論旨は理由がない。

(7)  後藤観光関係

所論を考慮に入れても原判決の第三章第三節第一項第五の四の2の(二)(一八三丁裏以下)の判決が相当であるから論旨は理由がない。

(8)  興和工業関係

39・2・7振替伝票(37・2・7とあるのは39・2・7の誤りと認める)(押四〇号中)、昭和三九年度貸付元帳(押五一号)によれば、本件不動産の代物弁済契約の被担保債権が四一六万円であると認められるので、これを右不動産の取得価格とするのが相当である。なお、原判決は証と題する書面(押三四号中)によって本件不動産の取得価格を四五〇万円と認定したもののようであるが、右書面には本件不動産のほか、長野県大町市の宅地を合せた物件の売渡価格が四五〇万円である旨記載されているので、右の四五〇万円をもって本件不動産の取得価格とすることはできない。そこで右の取得価格を四五〇万円とした原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認があり、論旨は理由がある。

(9)  大幸産商等関係

この点についての当裁判所の判断は、前記第一〇、第一一のそれと同一である。論旨は理由がない。

第一六  大山趣意書(23)第二章第四節第三の三記載の控訴趣意

ナルトスポーツ(司重機)、東京住宅協会、日本実業に対する貸付金の貸倒れが昭和三八年一月期に発生したのに昭和三九年一月期に発生したとする原判決には事実の誤認があるとする論旨について。

この点についての当裁判所の判断は原判決の第三章第三節第一項第四の二の2の(四)(一七三丁裏以下)の判断と同一である。なお、本件の各貸付金の返済期限が原判示のとおりであることは、後記第二〇の(1)ないし(3)のとおりである。論旨は理由がない。

第一七  大山趣意書(25)九七頁、大山上申書第一の三の(6)の(ト)の<イ>記載の控訴趣意

原判決は大橋に対する昭和三八年一月期の期末の貸付金から未収利息三六〇〇万円を除外すべきであるとしているが、右三六〇〇万円の明細やその算出根拠が不明であり、またそれ以外にも右期末の貸付金のなかに未収利息二四一三万三三六一円が含まれているが、それが控除洩れになっているとの事実誤認の論旨について。

(1)  関係証拠とくに37・12・29振替伝票(押三八号中)、38・1・17振替伝票(押三九号中)によれば、所論の三六〇〇万円は右期末の貸付金中の大山趣意書(25)九七頁のNo.四二の一億六〇〇〇万円のなかに含まれている二〇〇〇万円と、No.四九の二五六〇万円のなかに含まれている一六〇〇万円の合計であること、およびそれらがいずえも利息新貸であることが認められるので、右三六〇〇万円の明細ならびに算出根拠が不明であるという所論はそのいわれがない。

(2)  つぎに所論の未収利息二四一三万三三六一円についてみると、これは右のNo.四二の残りの一億四〇〇〇万円、No.四九の残りの九六〇万円、ならびにNo.五一の二五〇〇万円の各貸付金中に含まれているとの主張と解されるところ、関係証拠とくに37・11・20振替伝票(押三八号中)、38・1・24、38・1・25振替伝票(押三九号中)によれば、そのうち、

(イ) No.四二に含まれているという分については、No.四二は多くの貸付金が合算されて切替手続がとられた貸付金であるところ、そのもとになる貸付金のうち、No.二中の一一三万八八〇〇円、No.七中の一二六万七九八〇円、No.二〇中の八五万四一〇〇円、No.二九中の一八六万六一〇二円、No.三〇中の一八三万七三八〇円は、伝票上はいずれも旧債または仮受金となっているが、実質的には利息と認めるべきものの天引分であり、

(ロ) No.四九に含まれているという分については、No.四九のもとになる貸付金のうちNo.四五中の一七〇万円は利息新貸であり、

(ハ) その余は他の貸付金の元本の返済分、および利息の天引分のうち所論のいわゆる法定利息を超過する部分であることが認められる。

そうすると、右(イ)、(ハ)は前記第五ないし第七で説示したとおりこれらを未収利息であるとみることはできないが、(ロ)は未収利息と認めるべきである。

しかるに、原判決は右期末においてこれを貸付金残高から除外していないので、原判決にはこの点につき判決に影響を及ばすことの明らかな事実の誤認がある。論旨はこの点において理由がある。

第一八  大山趣意書(25)一四二頁、大山上申書第一の三の(6)の(ホ)の<ロ>記載の控訴趣意

原判決は昭和三九年一月期における吹原に対する貸付額面額三三億一七五〇万円中大山趣意書(25)一四二頁のNo.一一八と一三九の利息新貸分計一億九三〇〇万円を除いた三一億二四五〇万円を貸付金残高としているが、右No.一一八、一三九以外にもNo.四七、五三、一〇八、一一九~一二一のなかに合計九九六四万七四二五円の未収利息が含まれており、その未収利息の控除洩れがあるから貸付金残高は右未収利息を除いた三〇億二四八五万二五七五円となるべきであるとの事実誤認の論旨について。

関係証拠とくに38・6・12、38・7・10、38・11・15、38・12・3振替伝票(押五三号中)によれば、所論のいわゆる未収利息のうち、

(イ)  No.四七中の二四〇〇万円とNo.一〇八中の二〇二五万円合計四四二五万円は利息新貸であり、

(ロ)  その余は利息または実質的に利息と認めるべきものの天引分のうち所論のいわゆる法定利息を超過する部分である。

ことが認められる。そこで(ロ)については前記第五ないし第七および第一三において説示したとおりこれを未収利息であるとみることはできないが、(イ)については未収利息として右期末の貸付金残高より除外すべきである。しかるに原判決は右の措置に出ていないから、原判決にはこの点につき判決に影響を及ばすことの明らかな事実の誤認がある。論旨はこの点において理由がある。

第一九  大山趣意書(25)九七、一〇八、一〇九頁、大山上申書第一の三の(6)の(ト)の<ロ>記載の控訴趣意

原判決は大橋に対する昭和三九年一月期における貸付金残高を五〇億四九一〇万九三五〇円としているが、

一  森脇、大橋間に昭和三八年一〇月一七日に成立したいわゆる第一次和解契約の契約書に記載されている各貸付金の合計三一億三三五〇万円中和解契約によって棚上げとした貸付金(いわゆる和解契約分)の合計は二九億二五六〇万円で、このうち、

1 昭和三八年四月二日の三億円を未収前受配当金あるいは利息新貸であり、

2 大山趣意書(25)一〇八頁のNo.八四、一一九、一七〇、一七五、一八六、二〇一、二一九、二二〇、二四五、二六八、二七六、二七七中に未収利息四億四九〇七万円八五八九円が含まれている。

したがって、右1、2を除外すべきであるから、残額は二一億七六五二万一四一一円となる。

二  右和解契約書に記載されている貸付金中該契約による棚上げ外とした額面額二億円と一億円の計三億円のいわゆる和解新債のうち、前者は昭和三八年一月二九日の一億六〇〇〇万円を振替えたもの、後者は同年五月二〇日の一七〇〇万円、同年七月三日の一五四〇万円、同年八月五日の一五五〇万円計四七九〇万円を振替えたものであるから、和解契約時における和解新債の貸付額面額は右の一億六〇〇〇万円と四七九〇万円の合計二億七九〇万円で、このうちの大山趣意書(25)一〇八頁のNo.四二、七二、二四四、二七〇中には未収利息合計五一三八万五七五円が含まれているので、これを控除した一億五六五一万九四二五円を右和解新債の最終的な貸付額とすべきである。

三  第一次和解契約後の新規貸付の残高は二一億四九一〇万九三五〇円であるが、そのうち

1 昭和三八年一〇月九日および昭和三九年一月二七日のいずれも京成電鉄手形による各一億円(大山趣意書(25)九七頁のNo.四〇一と五八〇)は土地投資契約による未収前受配当金であるが、かりに原判決のように投資契約を認めないとする利息新貸であるから、そのいずれにしてもこれを控除すべきであり、

2 大山趣意書(25)九七頁のNo.四〇〇、No.四三〇、四九九~五〇一、五一六、五六〇、五六七、五七九、五八一、五九二のなかには未収利息合計一億八〇〇三万二〇三七円が含まれているから、これを減額すべきであり、大山趣意書(25)九七頁のNo.五二二、五二八、五八六、五九三はいずれも利息新貸であるから、その合計一億四六〇〇万円を控除すべきである。

そこで、前記貸付金残高から右1、2の金額を差引いた残額一六億二三〇七万七三一三円をもって右期末における新規貸付金の残高とすべきである。

結局以上一、二および三の合計三九億五六一一万八一四九円が右期末における貸付金総残高であるから、原判決は一〇億九二九九万一二〇一円の過大計上となっているとの事実誤認の論旨について。

(1) 所論一についてみるに、関係証拠とくに森脇<上>(大)三冊、昭和三七年度および同三八年度伝票(押三八、三九号)、同貸付元帳(押四九、五〇号)、契約書写(押六九号)を総合すれば、いわゆる和解契約分の貸付金の総計が二六億五〇〇〇万円であることが認められる(本判決別表一七頁「大橋に対する貸付金一覧表」備考欄参照)。

(イ) 昭和三八年四月二日の三億円については、関係証拠とくに38・4・2振替伝票(押三九号中)によれば、右は大橋への普通の貸付金であることが認められるので、所論のようにこれを未収前受配当金ともまた利息新貸とも解することはできない。そして右の三億円の貸付金に関し、関係証拠とくに坂本昭二郎作成の大橋関係計算表、38・4・5、38・4・9(裏面)、38・9・27振替伝票(押三九号中)、契約書写(押六九号)を総合すれば、昭和三八年四月五日、同月九日、同年九月二七日の三回にわたり右貸付元本の受入金として各一億円合計三億円の入金があったが、その後同年一〇月一七日の第一回和解契約に際し右の合計三億円を利息として入金したこととし、従来からの三億円の貸付元本をそのままひき続き存続させることにしたことが認められるので、合計三億円の入金をもって貸付元本に対する弁済があったものとすることはできない。したがって、右の貸付元本である三億円をいわゆる和解契約分として昭和三九年一月期の期末に計上した原判決は相当である。

(ロ) 関係証拠とくに38・2・27、38・3・23振替伝票、38・4・12、38・4・22、38・5・20、38・6・6出金伝票、38・6・29、38・8・1、38・8・7、38・8・9振替伝票(押三九号中)、昭和三八年度貸付元帳(押五〇号)によれば、所論のいう未収利息四億四九〇七万八五八九円のうち、

(ⅰ) No.八四に含まれているという一〇〇〇万円は伝票上は仮受となっているが、実質的には利息と認めるべきものの天引分であり、

(ⅱ) その余は他の貸付金の元本の返済分、および利息の天引分のうち所論のいわゆる法定利息を超過する部分である

ことが認められる。そうすると前記第五ないし第七で説示したとおりこれらを未収利息であると解することはできない。そこで前記和解契約分の貸付金のなかに未収利息が含まれているとする所論を採用することができない。

(2) 所論二についてみるに、関係証拠とくに森脇<上>(大)三冊、契約書写(押六九号)によれば、いわゆる和解新債中二憶円の分については、所論の一億六〇〇〇万円をそれまで全債権の共通担保であった千歳ビル外五件を担保として右の二億円の貸付金に変更し、また一億円の分については、所論の合計四七九〇万円を同じくそれまで全債権の共通担保であった京成電鉄株式九八万株を担保として右の一億円の貸付金に変更したものであることが認められる。しかし右の貸付金額の変更については、右のようにそれぞれ新貸付金につき個別担保の設定があったとしても、変更前の貸付金の合計二億七九〇万円を一挙に約一・四四倍の合計三億円としたことにつき合理的説明が困難であり、あるいは変更後の合計三億円のなかには遅延損害金的なものが含まれているのではないかと思料される。そうだとすると、原判決が未収利息をすべて貸付金から除外したと同様の趣旨により、変更前の合計二億七九〇万円をもっていわゆる和解新債の貸付金額とするのが相当である。なお、所論の一億六〇〇〇万円は前記第一七で説示した大山趣意書(25)九七頁のNo.四二の一億六〇〇〇万円と同一であり、そのなかには前述のとおり二〇〇〇万円の利息新貸が含まれているから、和解新債をみるに当ってもその額面額は一億四〇〇〇万円であり、No.七二の一七〇〇万円については後記(ロ)でみるとおり、一七〇万円の利息新貸が含まれているから、これを除外すべきである。

つぎに、関係証拠とくに37・11・20振替伝票(押三八号中)、38・1・17、38・6・29、38・7・27振替伝票(押三九号中)を総合すれば、所論のいう未収利息五一三八万五七五円のうち、

(イ) No.四二のもとになる貸付金中前記第一七の(2)の(イ)に摘示した五個の貸付金に含まれている分については、同所において説示したとおり実質的には利息と認めるべきものの天引分であり、

(ロ) No.七二のもとになる貸付金中前記第一七の(2)の(ロ)に摘示したNo.四五に含まれている一七〇万円は同所において説示したとおり利息新貸であり、

(ハ) その余は他の貸付金の元本の返済分、および利息の天引分のうち所論のいわゆる法定利息を超過する部分である

ことが認められる。そうすると右(イ)、(ハ)は、前記第五ないし第七で説示したとおり、これを未収利息であるとみることはできないが、右(ロ)は未収利息と認めるべきである。しかるに原判決は右期末において右(ロ)を貸付金残高から除外していない。そこで、結局、右期末における和解新債は一億八六二〇万円と認定すべきである。

(3) 所論三についてみるに、関係証拠によれば、第一次和解契約後の新規貸付残高の額面額が二一億四九一〇万九三五〇円であることが認められる。

そこで所論の1についてみると、関係証拠とくに森脇<上>(大)三・四冊、38・10・9振替伝票(押三九号中)、39・1・27振替伝票(押四〇号中)を総合すれば、森脇文庫が大橋に対し、昭和三八年一〇月九日および昭和三九年一月二七日の二回にわたり、いずれも京成電鉄手形の割引金として各一億円を貸付け、直ちにこれを森脇のいわゆる光明池等の土地投資分の貸付金の利息として受取っていることが認められるので、これを所論のように未収前受配当金であるとも利息新貸であるとも解することができない。そこで右の各一億円を除外すべきであるという所論に賛成することはできない。

つぎに所論の2についてみると、関係証拠とくに38・10・9、38・10・31、38・12・27、38・12・31振替伝票(押三九号中)、39・1・17、39・1・23、39・1・27、39・1・28、39・1・31振替伝票(押四〇号中)を総合すれば、大山趣意書(25)九七頁のNo.四〇〇以下九個の貸付金中に含まれているとする未収利息一億八〇〇三万二〇三七円のうち、

(イ) No.四三〇中の二八四万七〇〇〇円、No.四九九~五〇一中の五二三万八八〇〇円、No.五一六中の四五五万五二〇〇円、No.五六〇中の六九万七六〇〇円、No.五八一中の四五五万五二〇〇円、No.五九二中の一三二一万一六四〇円はいずれも仮受金であるが、そのうちNo.四九九~五〇一中の五二三万八八〇〇円は後記第二一の(1)において計上ずみであるから、これを差引くとその合計は二五八六万六六四〇円となり、

(ロ) No.四〇〇中の五八〇万円は伝票上は仮受になっているが後記第二一の(1)で認定するところの仮受金についての特約ができる以前のものであるから、実質的には利息と認めるべきものの天引分であり、

(ハ) No.五二二、五二八、五八六、五九三の全額と、No.五一六中の二〇〇〇万円、No.五六〇中の六〇〇万円およびNo.五九二中の一四八九万八七六〇円合計一億八六八九万八七六〇円はいずれも利息新貸であり、

(ニ) その余は他の貸付金の元本の返済分、および利息の天引分のうち所論のいわゆる法定利息を超過する部分である

ことが認められる。そうすると、右(ロ)、(ニ)は前記第五ないし第七において説示したとおりこれを未収利息であるとみることはできないが、(イ)は仮受金として計上すべきであり、また(ハ)は未収利息として除外すべきである。しかるに、原判決は右期末において、右(イ)の仮受金の計上洩れがあり、右(ハ)の未収利息については一億六〇〇万円の限度でこれを貸付金残高から除外しているにすぎない。そこで前記第一次和解契約後の新規貸付金で昭和三九年一月期の期末に残存しているものの総額は、昭和三八年一〇月九日の一億円二口、同月二一日の二五九〇万九三五〇円、同月三一日の五〇〇〇万円、同年一一月七日の二億円、同年一二月一九日の一億円、同月二七日の一億四〇〇〇万円、同月三〇日の一億円、昭和三九年一月一一日の八〇〇〇万円、同月一七日の三四〇〇万円、同月二三日の七一〇万二〇〇〇円、同月二七日の一億円二口、同月二八日の八〇〇〇万円、同月三〇日の三億円二口、同月三一日の一億四五一〇万一二四〇円以上を合計した一九億六二一一万二五九〇円となるべきである。

(4) 以上によれば、右期末における貸付金総残高は、前記(1)の二六億五〇〇〇万円、(2)の一億八六二〇万円、(3)の一九億六二一一万二五九〇円、その合計四七億九八三一万二五九〇円となるべきであり、また(3)の(イ)の二五八六万六六四〇円を仮受金として右期末に計上すべきである。しかるに原判決は貸付金残高として五〇億四九一〇万九三五〇円を計上し、また右の仮受金を計上していない。原判決には、この点につき判決に影響を及ばすことの明らかな事実の誤認がある。論旨はこの点において理由がある。

第二〇  大山趣意書(23)第二章第五節第四、大山趣意書(23)の補充書二ないし四、大山上申書第一の三の(11)の<2>記載の控訴趣意

各不動産の取得時期がいずれも原判決が認定した事業年度の前期であるとの事実誤認ないしは理由のくい違いの論旨について。

(1)  日本実業関係

大阪法務局今宮出張所登記官の作成した40・5・31登記簿謄本によれば、所論のように森脇が本件不動産につき昭和三八年一月二一日に所有権移転請求権保全の仮登記を所有権移転の本登記に変更したことが認められる。しかしながら、昭和三八年度貸付元帳(押五〇号)によれば、本件貸付につき昭和三七年一二月二四日に和解契約が結ばれ、その際最終支払期日が昭和三八年二月一二日と定められたことが認められるから、右貸付は右の返還期限の満了した日の翌日である同月一三日に本件不動産の所有権が代物弁済により森脇文庫に移ったものというべきである。したがって右の所有権移転の本登記をした同年一月二一日に森脇文庫が本件不動産を取得したと主張する所論はそのいわれがない。論旨は理由がない。

(2)  東京住宅協会関係

原判示第三章第三節第一項第五の五の2の(三)(一八八丁)の「………被告会社の右不動産の取得時期は、買戻期間が満了した同年二月一日………」とあるのは、措辞やや適切を欠くが、そのいわんとするところは「………買戻期間が満了した日の翌日である同年二月一日………」という趣旨であると解されなくはない。なお、佐藤富男40・6・4<検>には所論のような記載があるが、これを考慮に入れても原判決が本件不動産の取得時期を昭和三八年二月一日としたのは相当であって、原判決には理由のくい違いはない。論旨は理由がない。

(3)  ナルトスポーツ(司重機)関係

原判決挙示の林清太郎40・6・17<検>によれば、森脇文庫の本件不動産の取得時期が買戻期間の満了した日の翌日である昭和三八年二月一四日であることが優に認定できるので、所論を考慮に入れても、原判決には理由のくい違いがあるといえない。論旨は理由がない。

第二一  大山趣意書(25)一一五、一一六頁、大山上申書第一の三の(15)の<2>記載の控訴趣意

原判決は大橋に対して本件各期末において仮受金を計上していないが、

一  森脇、大橋間の昭和三九年三月八日付相互確認契約書の成立に際し、大橋の申出から、昭和三八年一〇月一七日に締結されたいわゆる第一次和解契約以降の新規取引分において大橋との約定から発生した仮受金(いわゆる分析仮受)を、右昭和三九年三月八日現在未払いとなっている右新規取引分の元本または利息等に充当処理したが、そのうち昭和三九年一月期の期末現在現実に入金となっている三億四三二八万一一一六円と、前記相互確認契約の際その精算を留保した仮受金(いわゆる一般仮受)中右期末現在現実に入金になっている大山趣意書(25)一一五頁のNo.四一三の一億円、No.四三八の一億円、No.四三八の一億二〇〇〇万円、No.五〇三の一億円計四億二〇〇〇万円、以上の合計七億六三二八万一一一六円が計上洩れになっており、

二  森脇、大橋間に昭和三九年五月一〇日ころ成立したいわゆる第三次和解契約後に入金となった仮受金中、大山趣意書(25)一一六頁のNo.七五一の二億九五四三万七四〇〇円、No.七四六の二億四〇〇〇万円、No.七五三の八〇〇〇万円、合計六億一五四三万七四〇〇円がいずれも精算処理がなされず、昭和四〇年一月期の期末において仮受金残高となるべきものであるが、これが計上洩れになっているので、原判決にはこれらの点につき事実の誤認があるという論旨について。

(1) 所論一についてみると、関係証拠とくに森脇<上>(大)五冊、大橋40・6・7<検>、39・3・8振替伝票中の計算メモ(押四〇号中)、計算メモ一六枚(押四一号のうち昭和四〇年領第四六九五号符一五六三―一〇中)、相互確認契約書(押七〇号)を総合すれば、昭和三八年一〇月一七日の第一次和解契約の際、右和解以降の貸付の都度貸付金の一割に当る金額を森脇文庫が受取り、そのうち約定の利息を除いた部分を仮受金としてこれを第一次和解契約書記載の旧債に充てる約束であったが、その後大橋との新規取引の頻度が増しその利息が遅滞するようになったので、昭和三九年三月八日のいわゆる第二次和解契約において右仮受金第一次和解契約後の新債の元本や未精算利息に充当処理することとしたこと、および該仮受金中同年一月期の期末に存在していた額は三億四三二八万一一一六円で、そのうち右期末における新債の未精算利息債権等に充当すべきものが一億五一二三万五六七六円あったことを認定することができる(本判決別表二五頁「昭和三九年一月期大橋に対する仮受金の充当分の内訳」参照)。そこで前者の金額から後者の金額を差引いた一億九二〇四万五四四〇円については、これを右期末に仮受金として計上すべきにかかわらず、原審はその処置に出ていない。

つぎに前記第二次和解契約において精算を留保したという仮受金中右期末現在現実に入金になっている大山趣意書(25)一一五頁のNo.四一三とNo.五〇三の各一億円についてみると、関係証拠とくに38・10・23、38・12・30振替伝票(押三九号中)、昭和三八年度貸付元帳(押五〇号)によれば、これらはいずれも大橋に対する貸付金の利息として入金されたもので仮受金であるとは認められないから、所論に賛成することはできない。これに対し、大山趣意書(25)一一五頁のNo.四三八の一億円とNo.四三八の一億二〇〇〇万円については、関係証拠とくに森脇<上>(大)二冊、38・9・9、38・9・27振替伝票(押三九号中)によれば、森脇文庫は昭和三八年九月九日大橋から額面一億円と同一億二〇〇〇万円の京成電鉄手形二枚を担保として取得したが、同月二七日吹原に対し別途に利息を支払ってこれを割引いて貰いその割引金二億二〇〇〇万円を保管していたところ、右両手形の決済日である同年一一月九日にこれを仮受金として後日その充当処理を決めることとなったものであることが認められる。したがって右の二億二〇〇〇万円は昭和三九年一月期の期末に未処理仮受金として計上すべきあるのにかかわらず、原判決はその処置に出ていない。

(2) 所論二のうち、大山趣意書(25)一一六頁のNo.七五一の二億九五四三万七四〇〇円とNo.七五三の八〇〇〇万円についてみると、関係証拠とくに森脇<上>(大)六冊、39・10・22、39・10・27振替伝票(押四〇号中)、契約書(押四一号中昭和四〇年領第四六九五号符一五六三―二―一)、昭和三九年度貸付元帳(押五一号)を総合すれば、(イ)昭和三九年一〇月二二日に、かねて大橋が担保として差入れてあった京成電鉄株式一四七万七一八七株を一株二〇〇円、総額二億九五四三万七四〇〇円で大橋に引渡し、同人から右金額を受領したので、これを仮受金として処理し、(ロ)同月二七日に、大橋との間で同年五月一〇日ころ成立したいわゆる第三次和解契約において同人が担保として提供した不動産のうち東京都港区六本木の土地約二〇〇坪を解除し、その解除金として八〇〇〇万円を受領したので、これを仮受金として処理し、右(イ)、(ロ)とも昭和四〇年一月期の期末までにその精算処理がなされず、該期末において仮受金残高となっているものであることが認められる。したがって原判決は右期末に仮受金として右(イ)、(ロ)の合計三億七五四三万七四〇〇円を計上すべきであるのにかかわらず、その処理をしていない。

つぎに所論二のうちNo.七四六の二億四〇〇〇万円についてみると、関係証拠とくに坂本昭二郎作成の大橋関係計算表、森脇<上>(大)六冊、39・10・22、39・10・27振替伝票(押四〇号中)、昭和三九年度貸付元帳(押四〇号中)、昭和三九年度貸付元帳(押五一号)を総合すれば、昭和三九年一月二四日に、所論が投資契約に基づく出資金であると主張する種々の貸付金に対する利息として、大橋から町井久之が同月二三日に振出した額面二億四〇〇〇万円の手形を受取り、同年一〇月二七日大橋から右手形の決済分として同額の金員を受領したことが認められる。そうすると二億四〇〇〇万円は既収の利息であるから、これを仮受として計上すべきであるとする所論を容認することはできない。

(3) 結局右(1)については一億九二〇四万五四四〇円と二億二〇〇〇万円の合計四億一二〇四万五四四〇円の計上洩れがある点において、また、右(2)についても三億七五四三万七四〇〇円の計上洩れがある点において、原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認がある。論旨はこの点において理由がある。

第二二  大山上申書第一の三の(ニ)、(ホ)記載の控訴趣意

勘定科目普通預金中昭和四〇年一月期の公表金額二八万一二〇〇円が存在しないのにこれを計上した原判決には事実の誤認があるとの論旨について。

原判決の別表第三の昭和四〇年一月期の修正貸借対照表の勘定科目<3>普通預金の借方の公表金額には、所論のように二八万一二〇〇円が計上されているが、原判決の第二章第四節第一の勘定科目「普通預金」欄(五三丁)に摘示されている証拠を検討しても、森脇文庫に右のような普通預金が存在したとは認められず、他に右預金の存在を認定するに足りる証拠は見当らない。そこで二八万一二〇〇円の普通預金があるとした原判決には事実の誤認があり、それが判決に影響を及ばすことは明らかである。論旨は理由がある。

第二三  大山趣意書(23)第二章第三節、大山上申書第一の三の(5)記載の控訴趣意

勘定科目定期預金中昭和四〇年一月期の三和東京の定期預金五〇〇〇万円が森脇文庫のものでないのに、これを同文庫のものであるとした原判決には事実の誤認があるとの論旨について。

この点に関する当裁判所の判断は原判決の第三章第三節第一項第三の3の(ニ)(一六五丁裏以下)の原審の判断と同一である。森脇40・6・7<検>によっても、本件の五〇〇〇万円の定期預金証書につき森脇がその保管方を平本に依頼したもので、右定期預金は森脇文庫のものであることが認められる。なお、本件記録を精査しても原審が税法事件において所論のように、予断偏見に基づいて森脇の供述および森脇肇の証言を措信しなかったものとは認められない。論旨は理由がない。

第二四  大山趣意書(25)一四二頁、大山上申書第一の三の(6)の(ホ)の<ハ>、<ニ>記載の控訴趣意

原判決は吹原に対する昭和四〇年一月期の期末における貸付金の残元本について

一  昭和三九年五月一五日ころ森脇、吹原間に成立した和解契約によるいわゆる旧債分を一八億六六一六万二四六七円としているが、右残高については、

1 (一)大山趣意書(25)一四八頁のNo.四七、五三、一〇八の各天引分九七五四万七七円と、(二)No.一八九の三〇〇〇万円および同一四九頁のNo.旧一〇の六五〇〇万円の各利息新貸分の合計一億九二五四万七七円の控除洩れがあり、

2 右和解契約時において端数調整をして切上げた仮受金一一六万二四六七円の計上洩れがある

ので、右1、2の合計一億九三七〇万二五四四円を前記旧債分より減額して一六億七二四五万九九二三円を旧債分の残元本とすべきであるから、原判決にはこの点につき事実の誤認があり、

二  前記和解契約後のいわゆる新債分を六〇億二一七万九五〇〇円としているが、そのうち、

1 昭和三九年一〇月一九日の三菱長原の通知預金名義の二〇億円の貸付金というのは、森脇が吹原に三菱長原へ三〇億円の通知預金をして貰うため大和京橋の預手三〇億円を吹原に委託交付したものの一部である。したがって右預手は森脇文庫に帰属するもので吹原に対する貸付金ではない。しかるに該預手は同日吹原により詐欺または横領されて通知預金になっていないので、右預手による交付金のうち右期末に残存する二〇億円を森脇文庫の雑損として控除すべきであり、

2(一) 大山趣意書(25)一四二頁のNo.四一一の藤山手形の割引による二億円の貸付については、旧債仮受金として五二八〇万円を天引し、

(二) 同No.四一二の五反田売買代金としての一〇億円の貸付については旧債内入金として六億二〇〇〇万円を天引し、

(三) 同No.四二二~三の間組手形の割引による二億五〇〇〇万円の貸付については、旧債仮受金として一億二〇五〇万円を天引しているので、以上の合計七億九三三〇万円を控除すべきであり、

3 同No.三四〇の一億円は朝日土地手形を担保とする利息の切替分であるから、該手形の支払期日が来るまで未収利息と見なすべきであり、また同No.四七三の四〇〇〇万円は利息新貸でこれまた未収利息と見るべきであるから、右の合計一億四〇〇〇万円を控除すべきであり、

4 同No.三二二、三三七、三三八、三五五、四〇九、四一一、四一二、四二二~三、四五二~八、四七七~八のなかに含まれている未収利息の合計九億九五七八万五一三三円中から右2の七億九三三〇万円を除いた二億二四八万五一三三円を控除すべきであり、結局前記新債分六〇億二一七万九五〇〇円から、右1ないし4の合計を減じた残額二八億六六三九万四三六七円を右期末における新債の残元本とすべきであるから、原判決はこの点において事実の誤認があるとする論旨について。

(1)(イ) 所論一の1の(一)のNo.四七、五三、一〇八の各天引分九七五四万七七円についてみると、前記第一八で説示したとおり、原審がそのうち四四二五万円を未収利息でないとして、期末の貸付金残高から除外していないから、昭和四〇年一月期の旧債残高を算出するにあたっても右金額を除外すべきである。

(ロ) 所論一の1の(二)のNo.一八九の三〇〇〇万円についてみると、39・2・28振替伝票(押五三号中)記載の四〇〇〇万円の利息立替分としての貸付を指すものと思われるが、39・3・3振替伝票(同押号中)によれば、右の四〇〇〇万円は同年三月三日弁済になったことが認められる。また、No.旧一〇の六五〇〇万円についてみると、39・10・14振替伝票(同押号中)に記載の八五〇〇万円の旧債の利息の貸付のうちの二〇〇〇万円を除いたものと思われるが、昭和三九年度貸付元帳(押五一号)、39・11・21振替伝票(押五三号中)によれば、右は同年一二月三日にこれまた弁済になっていることが認められる。そこで原判決は右期末において右の四〇〇〇万円と六五〇〇万円を貸付金残高より除外しており、この点につき原判決に誤りはない。

(2) 所論一の2については、関係証拠とくに和解契約書(押一号)によれば、端数を切り上げて双方合意のうえで和解金額を確定したものと認められるので、この端数に当る金額一一六万二四六七円を仮受金として計上すべきではない。そこで右金額を右期末の仮受金に計上しなかった原判決は相当である。

(3) 所論二の1についてみると、後記第四章第二節一で説示するところによれば、吹原は昭和三九年一〇月一九日森脇に対し三菱長原に三〇億円の通知預金を設定すると詐言を弄して三〇億円の預手一通を森脇から騙取したことが認められるが、関係証拠とくに森脇40・6・5<検>、39・10・16、39・10・19振替伝票(押五三号中)を総合すれば、昭和三九年一〇月一九日右預手は同額の貸付金として交付され右貸付金中二五億円については一般の貸付の場合と同様な利息が徴されていることが認められる。もっとも40・3・15相互債権債務確認契約書(押二号)には、所論のように、本件の預手につき、吹原が森脇文庫の所有権の金をそのまま三菱長原に通知預金をしたとの記載があるが、本件以外に吹原が森脇文庫より金員を借用して銀行に通知預金をする場合の念書にも、森脇文庫の所有権を留保したまま右預金をする旨の記載がある(押一五六ないし一五八号参照)ので、前記相互債権債務確認契約書に右のような記載があるからといって、直ちに所論のように本件預手を森脇が吹原に委託交付し同人が森脇文庫の所有のまま通知預金をすることになっていたとは認められない。したがって吹原が通知預金をするといって森脇文庫より引き出した三〇億円は、吹原に対する貸付金と認めるべきであるから、右期末に残存する右金員中の二〇億円を貸付金残高とした原判決は相当で、所論を容れることができない。

(4) 所論二の2についてみると、関係証拠とくに平本40・6・8<検>(謄本)、森脇<上>(吹)三冊、39・11・21、39・11・25、39・12・10振替、出金伝票(押五三号中)を総合すれば、

(イ) 昭和三九年一一月二一日吹原が持参した藤山手形額面一億円のもの二通を割引くに当り、後日旧債に充当処理する約で五二八〇万円を仮受金として天引し、

(ロ) 同月二五日吹原に対し、五反田ボーリング場の開業資金として一〇億円を貸付けるに当り、旧債元本へ六億二〇〇〇万円を内入することとして右金額を天引し、

(ハ) 同年一二月一〇日吹原が持参した間組手形額面一億五〇〇〇万円、同一億円を割引くに当り、後日旧債に充当処理する約で一億二〇五〇万円を仮受金として天引し

たことが認められる。

そこで右の(イ)の五二八〇万円と(ハ)の一億二〇五〇万円についてはこれらを昭和四〇年一月期の期末の仮受金ととして計上し、また(ロ)の六億二〇〇〇万円については、これを旧債の残元本中前記第一八の(イ)の四四二五万円を除いた金額から減額して、昭和四〇年一月期の旧債を一二億一九一万二四六七円とすべきであるのにかかわらず、原判決はいずれもその処置に出ていない。

(5) 所論二の3のうち、No.三四〇についてみると、関係証拠とくに39・8・29(39・9・13)、39・9・11振替伝票(押五三号中)によれば、昭和三九年九月一一日に吹原に対し朝日土地手形割引名下に一億円を貸付けて利息を別途に入金させ、なお右割引金を仮受金として保留し、その後に他の貸付金の弁済に充当したことが認められるので、これを未収利息であるとする所論を容れることができない。また、No.四七三については、40・1・26振替伝票(押五三号中)によれば、利息新貸であるとは見受けられない。

(6) 所論二の4の二億二四八万五一三三円についてみると、関係証拠とくに検察事務官作成の41・11・9<報>、39・8・24、39・9・9、39・9・18、39・11・11、39・11・19、40・1・27振替伝票(押五三号中)によれば、

(イ) No.四〇九の一〇〇〇万円は原判決の別表五四頁のNo.四六において仮受金として計上ずみであり、

(ロ) No.四七七~八中の八四三万四三七〇円は仮受金であり、

(ハ) No.四五二~八中の五〇〇万円については、伝票には「登記費用及税引当分」と記載されているが、その金額が実際に要した費用よりもはるかに多額であることおよび右金員に関しその後清算した形跡が見受けられないことよりして、右の金員は昭和四〇年一月期末までには、森脇文庫の収入に帰したものであり、

(ニ) No.三五五中の一一二五万円は利息新貸であり、

(ホ) その余は他の貸付金の元本の返済分、および利息または実質的に利息と認めるべきものの天引分のうち所論のいわゆる法定利息を超過する部分である

ことがそれぞれ認められる。そうすると右(イ)は仮受金として計上ずみであり、(ハ)は森脇文庫の収入であり、(ホ)は前記第五ないし第七および第一三で説示したとおり、これを未収利息であると見ることはできないが、他方、原判決には(ロ)の仮受金の計上洩れがあり、所論のNo.三二二以下一〇個の貸付金中には(ニ)の未収利息が含まれているが、原判決は期末においてこれを除外していない。

(7) そこで、前記(1)の(イ)、(4)、(6)の(ロ)、(ニ)については、いずれも原判決には判決に影響を及ばすことの明らかな事実の誤認があるので、論旨はこの点において理由があり、その余については論旨は理由がない。

第二五  大山上申書第一の三の(6)の(ト)、大山趣意書(25)九七頁記載の控訴趣意

原判決は大橋に対する昭和四〇年一月期における貸付金を二二〇〇万円としているが、右貸付金の額面額は二三七五万円で、そのうちの大山趣意書(25)九七頁のNo.七一三中に未収利息として四九三万二一八〇円が含まれているので、これを減額して貸付金残高を一八八一万七八二〇円とすべきであり、原判決にはこの点につき事実の誤認があるという論旨について。

(1)  所論の貸付額面額のうち、No.七五四の一七五万円は原判決に計上されていないから所論のうち貸付額に右一七五万円を含めている部分は、自己に不利益な主張というべく、適法な控訴理由に当らない。

(2)  関係証拠とくに39・6・15振替伝票(押四〇号中)によると、No.七一二(所論のNo.七一三はNo.七一二の誤記と認める)の貸付額面額は二五〇〇万円であるところ、そのうち、(イ)一二九八万七〇〇〇円は仮受金であり、(ロ)二一万五三〇〇円は利息新貸であり、(ハ)その余は他の貸付金の元本の返済分および利息の天引分であること、およびその後にいたり前記貸付額面額に対し一五〇〇万円の内入返済があったので残存額面額が一〇〇〇万円となったことが認められる。そうすると、(イ)は仮受金として計上すべきであり、(ロ)は残存債権額から除外すべきであり、他方(ハ)は前記第五ないし第七において説示したとおりこれを未収利息であると見ることはできない。

(3)  結局、右期末の残存額面額としては、No.七五五の一二〇〇万円とNo.七一二の残存額面額一〇〇〇万円との和から右(ロ)の二一万五三〇〇円を差引いた二一七八万四七〇〇円とすべきであり、また、(イ)の仮受金一二九八万七〇〇〇円を計上すべきであるのに原判決はそれらの処理をしていないから、原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認があるということに帰する。論旨はこの点において理由がある。

第二六  大山上申書第一の三の(11)の<1>記載の控訴趣意

昭和三五年八月三一日に中外印刷から三四〇〇万円で取得した不動産の所有権が昭和四〇年一月二六日に消滅したので、昭和四〇年度の取得不動産の総額から右金額を減額すべきであるのに、これをしていない原判決には事実の誤認があるとする論旨について。

関係証拠とくに神田弐百六拾坪土地権利書及仮処分関係書類(押九〇号中)、昭和三五年度貸付元帳(押一四四号)によると、安全投資が昭和三五年一月一日以前に中外印刷に貸付けた金員のうちの三四〇〇万円につき同年八月三一日に本件不動産を代物弁済として取得したので、右不動産はそれ以来安全投資の所有に帰したものであることが認められる。そこで右日時に該不動産の所有権が森脇文庫に帰属したことを前提とする所論は前提を欠き採用することができない。論旨は理由がない。

第四章 当裁判所による自判

第一節  破棄自判の理由

第一章第一節第一の二、第二、第二節第一の二、第三節第一、第二、第六の二、三、第四節第一、第四の二、第二章第二節第二、第三の二、第三章第一節第八、第九、第一二、第一三、第一五の(8)、第一七ないし第一九、第二一、第二二、第二四、第二五で説示したとおり、原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認があるところ、原判決は、吹原については、原判示第一章第二節第一の二、第三の一、第四の二の1ないし4のの各罪を同第五の二、第六の二、第七の二の2の偽造有価証券行使の各罪と併合罪の関係にあるとして、原判示第一章第二節第三の二の2の昭和三九年一一月二〇日付偽造私文書の行使および同第四の二の5の各罪に対する二個の刑とともに刑を言渡し、森脇については、原判示第一章第二節第一の二、第二の二、第三の一、二の2の昭和三九年一一月二〇日付偽造私文書の行使、第四の二、第三節第一の三、第四節第一の各罪をその罪と併合罪の関係にあるとして一個の刑を言渡し、大橋については、原判示第一章第三節第一の三の罪をその余の罪と併合罪の関係にあるとして一個の刑を言渡し、森脇文庫については、原判示第一章第四節第一の各罪をその余の罪と併合罪の関係にあるとして一個の刑を言渡しているから、原判決中吹原、森脇、森脇文庫に対する各有罪部分および大橋に関する部分は、その部分について破棄を免れない。

よって、前章までに判断を加えた以外の控訴趣意に対する判断を省略し、刑訴法三九七条一項、三八二条により原判決中前記部分を破棄し、なお本件は記録ならびに原審および当審で取調べた証拠によって直ちに判決をすることができるものと認め、検察官の訴因の予備追加の申立てを許可したうえ(なお、検察官は後記第二節二の森脇に対する恐喝未遂の罪および同三の吹原に対する私文書偽造の罪については、いずれも当裁判所の訴因の予備的追加の命令に応じなかったが、当裁判所の右命令はもともと訴因の予備的追加が厳密には必要かどうか問題ではあるが、被告人に対し十二分に防禦の機会を与える見地からなされたものであり、検察官の公判延における当裁判所に対する質問などからみると、検察官が右命令に従わなかったのも検察官にこれらの事実について裁判所が示した予備的訴因では処罰を求める意思がないからではなく、訴因の予備的追加の必要がないという見解に基づくものであると認められること、また、森脇の本件通知預金証書の預金の裏付けについての認識および黒金文書の偽造が吹原と森脇の共謀によるものか否かの点は原審以来最大の争点になっていてこれらの点につき防禦がつくされていると認められることに徴すると、本件においては訴因の予備的追加の手続を経ないでこれを認定してさしつかえないと認める)同法四〇〇条但書により、さらにつぎのとおり自判する。

第二節  認定事実

以下、当裁判所が新たに認定する事実のほかは、原判示第一章第二節第五ないし第七、第三節第一の一、二、四、五、第二、第三、第四節第二と同一であるから、これを引用する。

七 法人税法違反

被告人森脇は、被告会社株式会社森脇文庫の代表取締役としてその業務全般を統轄しているものであるが、森脇は同文庫の業務に関し法人税を免れようと企て、受取利息の大半を脱漏して簿外預金を設定するなどの不正な方法により所得を秘匿したうえ、

1  昭和三七年二月一日より同三八年一月三一日までの事業年度において、森脇文庫の実際所得金額が少なくとも一四億五一八万一〇六六円あったのにかかわらず、昭和三八年三月三〇日東京都中央区日本橋堀留町二丁目五番地所在所轄日本橋税務署において、同税務署長に対し欠損金額が四二五万九五二四円であって納付すべき法人税はない旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって同文庫の右事業年度の正規の法人税額五億三三八六万八七八〇円を逋脱し、

2  昭和三八年二月一日より同三九年一月三一日までの事業年度において、同文庫の実際所得金額が少なくとも五四億六七〇八万五七一五円あったのにかかわらず、昭和三九年三月三一日前記日本橋税務署において、同税務署長に対し欠損金額が四六一万五九三三円であって納付すべき法人税はない旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって同文庫の右事業年度の正規の法人税額二〇億七七三九万二五六〇円を逋脱し、

3  昭和三九年二月一日より同四〇年一月三一日までの事業年度において、同文庫の実際所得金額が少なくとも一三億八二四五万六四七四円あったのにかかわらず、昭和四〇年三月三一日前記日本橋税務署において、同税務署長に対し欠損金額が一三二二万五一六六円であって納付すべき法人税はない旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって同文庫の右事業年度の正規の法人税額五億二五一八万三二〇〇円を逋脱し

たものである。

(なお、修正貸借対照表は別冊第一表ないし第三表のとおりであり、税額計算書は同第四表のとおりである。)

第三節  証拠の標目

判示七の事実につき

以下に追加、訂正するほかは、原判決第二章第四節第一と同一であるから、

これを引用する。

勘定科目「貸付金」につき

一、森脇<上>(吹)三冊、<上>(大)三ないし五冊を加え、「平本方(同年六月八日付)」

とあるのを、「平本方(同年六月八日付謄本)」と訂正し、

同「土地建物」につき

一、昭和三九年度伝票一二束(同号の40)を加え、「興和工業関係一束(同号の34)」を削り、

同「借受金」につき

一、徳田一枝五<公>を加え、「借受金」を「借入金」と訂正し、

同「仮受金」につき

一、証人猿橋岳近一〇一・一八二<公>(吹)、森脇肇一〇五<公>(吹)

一、吹原一七七<公>(吹)

一、猿橋40・5・25<検>

一、吹原40・6・25<検>(謄本)、大橋40・6・7<検>

一、検察事務官藤井隆作成の45・11・4判決謄本

一、森脇40・5・17、40・6・15<検>

一、森脇<上>(吹)三冊、<上>(大)二・五・六冊

一、和解契約書一通(同号の1)、相互債権債務確認契約書一通(同号の2)、計算メモ一六枚(同号の41のうち昭和四〇年領第四六九五号符一五六三―一〇中)、昭和三七年度貸付元帳一冊(同号の49)、相互確認契約書一通(同号の70)を加える。

第五節  法令の適用

二 森脇について

判示第四章第二節二の2の所為は、刑法二五〇条二四九条一項に、同五の1の(一)、(二)、2の(一)、(二)、3の(一)ないし(三)、原判示第一章第三節第三の二の各所為は、いずれも同法二五六条二項罰金等臨時措置法三条一項一号(本法については犯罪後の昭和四七年法律六一号により刑の変更があったので、刑法六条一〇条により軽い改正前の罰金等臨時措置法三条一項一号の刑による)に、判示第四章第二節五の1の(三)の所為は刑法二五六条一項に、同七の1ないし3の各所為は、いずれも昭和四〇年法律三四号附則一九条により同法による改正前の法人税法四八条一項に、原判示第一章第四節第二の各所為は、いずれも昭和四五年法律一三号による改正前の出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律五条一項にそれぞれ該当するところ、判示第四章第二節七の1ないし3、原判示第一章第四節第二の各罪につき所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑を併科する(なお、右第四章第二節七の1ないし3の各罪については、前記法人税法四八条二項を適用する)こととし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文一〇条により刑期犯情の最も重い判示第四章第二節二の2の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条一項によりこれを右懲役刑と併科することとし、同条二項により判示第四章第二節五の1の(一)、(二)、2の(一)、(二)、3の(一)ないし(三)、同七の1ないし3、原判示第一章第三節第三の二、同第四節第二の各罪につき所定の罰金額を合算し、その刑期および金額の範囲内で刑訴法四〇二条を勘案したうえ、被告人を懲役五年および罰金三億五〇〇〇万円に処し、刑法二一条を適用して原審における未決勾留日数のうち二四〇日を右懲役刑に算入し、右罰金を完納することができないときは同法一八条により金七〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、訴訟費用については刑訴法一八一条一項本文を適用して別紙訴訟費用負担一覧表記載のとおり、これを被告人に負担させる。

四 森脇文庫について

判示第四章第二節七の1ないし3の各所為は、いずれも昭和四〇年法律三四号附則一九条により同法による改正前の法人税法四八条一項五一条一項に、原判示第一章第四節第二の各所為は、いずれも昭和四五年法律一三号による改正前の出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律五条一項一三条一項にそれぞれ該当するところ、判示第四章第二節七の1ないし3の各罪所定の罰金額については前記法人税法四八条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告会社を罰金四億五〇〇〇万円に処し、訴訟費用については刑訴法一八一条一項本文を適用して、別紙訴訟費用負担一覧表記載のとおり、これを被告会社に負担させる。

第六節  量刑の事情

二 森脇について

恐喝未遂事件および賍物故買等の事件については、自己の不明により多額の貸付をして債権の回収が困難になったのにもかかわらず、吹原から取得した通知預金証書がその後預金の裏付けのないものであることを知ったのにこれを悪用し、あるいは吹原、大橋が持込んできた手形を賍物であるかもしれないと認識しながら割引くなど自己の被害を第三者から回収しようと企てたものであって、いずれも悪質な事犯である。とくに恐喝未遂事件は、三菱銀行が吹原による詐欺の被害者であることを知りながら、かつて自己が摘発に関与したと伝えられていたいわゆる造船疑獄事件を引合に出し、信用失墜という銀行の最大の弱点につけ込んで多額の金員を喝取しようとしたもので、森脇の悪性を示す犯行というべきである。

つぎに法人税法違反事件については、いわゆる裏帳簿、裏伝票を使用して、本件起訴年度の三年間にわたり、合計八二億五〇〇〇万円にのぼる巨額の課税所得を秘匿し、あまつさえ毎年赤字申告をしていたもので、納税意欲は皆無であるといっても過言ではなく、本件は犯行の態様、犯意、逋脱金額などの点において、この種事犯中最も悪質なものといわなければならない。

さらに、いわゆる高金利取締法違反事件については、同じ罪名で昭和三四年七月三一日懲役一年六月(三年間執行猶予)および罰金一〇〇〇万円に、同四〇年四月二二日罰金一五〇〇万円に処せられており、本件は後者の事件の一審審理中の事件であって、厳罰をもって反省を促す以外に方法がない。

以上のほか、恐喝未遂事件および賍物故買等の事件についてはまったく反省改悟の情が認められないこと、その他本件記録にあらわれた諸般の事情を考慮すると、被告人の刑事責任もまた相当に重いものといわなければならない。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 東徹 裁判官 石崎四郎 裁判官 佐藤文哉)

訴訟費用負担一覧表 〔「負担する被告人」欄の括弧内は、被告人らと平等負担することになる原審相被告人〕

<省略>

略記号および略語例

1 被告人(原審相被告人を含む)の氏名は原則として姓のみで記す。

2 証人ら関係人の氏名は、原則として二回目以後姓のみで記す。

3 株式会社名は原則として「株式会社」を省略する。

4 銀行名は原則として「銀行」を省略し、支店名は、たとえば、大和銀行京橋支店を「大和京橋」と記す。

5 約束手形は原則として単に「手形」と表示し、たとえば、京成電鉄振出の約束手形を「京成電鉄手形」と記す。

6 証拠物の押番号は、吹原事件については昭和四七年押第三三六号の、大橋事件については同年押第三三七号の、脱税・高金利違反事件については同年押第三三八号の各符番号を示す。

7 以上のほかは、つぎの例による。

斉藤趣意書―――弁護人斉藤悠輔作成名義の控訴趣意書

斉藤補充書―――弁護人斉藤悠輔作成名義の控訴趣意の補充書

小泉趣意書―――弁護人小泉英一作成名義の控訴趣意書

小泉補充書―――弁護人小泉英一作成名義の控訴趣意補充書

中野田口趣意書―――弁護人中野博義、同田口俊夫共同作成名義の控訴趣意書

大山趣意書(1)―――弁護人大山忠市作成名義の控訴趣意書第一部一冊(1)

大山補充書(33)―――弁護人大山忠市作成名義の控訴趣意書補充書(33)

大山上申書―――弁護人大山忠市作成名義の昭和四九年一二月二七日付上申書

伊達趣意書―――弁護人伊達秋雄、同小谷野三郎、同三宅陽、同鳥越溥、同佐藤博史共同作成名義の控訴趣意書補充書(35)

向江趣意書―――弁護人向江璋悦、同佐藤成雄、同安西義明、同多田武、同布施誠司共同作成名義の控訴趣意書

40・4・25―――昭和四〇年四月二五日付または昭和四〇年四月二五日

<公>―――証人・被告人等の原審公判または公判準備調書中の供述記載(上部の和数字は公判回数を示す)

<期日外>―――原裁判所の公判期日外の証人尋問調書中の供述記載

<当公>―――被告人の当審公判廷における供述(上部の和数字は公判回数を示す)

<上>―――上申書

<明>―――森脇<上>の別冊「吹原に対する貸付金経過明細表」または「大橋に対する貸付金経過明細表」(下部の和数字は同表記載の通し番号を示す)

<陳>―――原審相被告人の意見陳述書

<検>―――検察官に対する供述調書

<報>―――捜査報告書または報告書

<回>―――回答書

(吹)―――吹原事件

(大)―――大橋事件

東京高裁昭和四七年(う)第一四〇〇号

吹原弘宣ら四名に対する詐欺等被告事件判決書別冊

法人税法違反関係諸表

目次

第一 修正貸借対照表(三八年一月期)・・・・・・一〇三五

第二 修正貸借対照表(三九年一月期)・・・・・・一〇三六

第三 修正貸借対照表(四〇年一月期)・・・・・・一〇三七

第四 税額計算書・・・・・・一〇三八

第五 逋脱所得の内容・・・・・・一〇三九

(1) 簿外現金各期末増減一覧表・・・・・・一〇三九

(2) 簿外普通預金各期末増減一覧表・・・・・・一〇三九

(3) 簿外定期預金各期末増減一覧表・・・・・・一〇四〇

(4) 公表貸付金各期末増減一覧表・・・・・・一〇四一

(5) 簿外貸付金各期末増減一覧表・・・・・・一〇四一

(6) 公表貸付金一覧表・・・・・・一〇四二

(7) 簿外貸付金一覧表・・・・・・一〇四四

(8) 大橋に対する貸付金一覧表・・・・・・一〇四八

(9) 吹原に対する貸付金一覧表・・・・・・一〇四九

(10) 簿外所有株式各期末増減一覧表・・・・・・一〇五〇

(11) 簿外不動産各期末増減一覧表・・・・・・一〇五〇

(12) 簿外借入金各期末増減一覧表・・・・・・一〇五一

(13) 銀行借入金期末残高一覧表・・・・・・一〇五一

(14) 個人借入金期末残高一覧表・・・・・・一〇五二

(15) 簿外仮受金各期末残高一覧表・・・・・・一〇五三

(16) 大橋に対する仮受金一覧表・・・・・・一〇五四

(17) 昭和三九年一月期大橋に対する仮受金充当分の内訳・・・・・・一〇五五

(18) 吹原よりの仮受金の処理状況・・・・・・一〇五六

(19) 未払事業税計算書・・・・・・一〇六〇

(20) 損金算入納付税額否認・・・・・・一〇六一

(21) 認定賞与・・・・・・一〇六一

(第一) 修正貸借対照表

株式会社 森脇文庫 昭和38年1月31日

<省略>

(第二) 修正貸借対照表

株式会社 森脇文庫 昭和39年1月31日

<省略>

(第三) 修正貸借対照表

株式会社 森脇文庫 昭和40年1月31日

<省略>

(第四)

税額計算書

<省略>

(第五)

逋脱所得の内容

簿外現金各期末増減一覧表

<省略>

簿外普通預金各期末増減一覧表

<省略>

簿外定期預金各期末増減一覧表

<省略>

公表貸付金各期末増減一覧表

<省略>

簿外貸付金各期末増減一覧表

<省略>

公表貸付金一覧表

<省略>

<省略>

簿外貸付金一覧表

※印は公表貸付金と重複するものであり合計からは除外されている。

<省略>

<省略>

<省略>

<省略>

大橋に対する貸付金一覧表

<省略>

吹原に対する貸付金一覧表

<省略>

簿外所有株式各期末増減一覧表

<省略>

簿外不動産各期末増減一覧表

<省略>

<注> 簿外不動産については、昭和37年1月31日以前において被告会社が取得したものについては、これを特に計上しなかったものである。

簿外借入金各期末増減一覧表

<省略>

銀行借入金期末残高一覧表

<省略>

個人借入金期末残高一覧表

<省略>

※徳田一枝に対する分につき判決本文第三章第一節第一二を参照

簿外仮受金各期末残高一覧表

<省略>

大橋に対する仮受金一覧表

<省略>

昭和39年1月期大橋に対する仮受金の充当分の内訳

<省略>

吹原よりの仮受金の処理状況

(註)○印のものは39.12.31現在処理未済として40年度貸付金元帳(裏)に仮受として繰越として記載されているもの。 (森脇・貸付金元帳(裏)による)

<省略>

<省略>

<省略>

仮受金期末残高調

<省略>

40.1.31現在の残高として計上したものは「吹原よりの仮受金の処理状況」一覧表の○印のもののほか、同表のNO.22の残、NO.43、NO.64、NO.65、NO.66、NO.67、NO.68、NO.69である。

(注) 期末残高欄中( )内の数字は外数であり、五反田分10億の貸付金に対する毎月の利息9,000,000円の3月分(前表中のNO.50、NO.58、NO.65)の合計である。

なお、本調査には貸付をなした際に、受取利息と同時に振替伝票の貸方に仮受金として計上されるもの(正規の受取利息に上積された利息ともみられるもの)を除き、吹原より現金、預手、銀行振込等の形で受入れた純然たる仮受分と思われるもののみを対象とした。

未払事業税計算書

<省略>

※ なお、昭和38年1月期の未払事業税は課税標準が明らかでないからこれを計上しない。

損金算入納付税額否認

<省略>

上記金額は国税徴収法第39条に基づき(株)森脇文庫が将光商事(株)の法人税の第二次納税義務者として納付したもので法人税法施行規則第17条の3(昭和22.3.31勅令第111号)昭和40.3.31法律第34号附則2条により損金不算入とした。

認定賞与

<省略>

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